097号

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38 高知論叢 第97号トが必要になる。これらをあわせて(A)資源系の囲い込みコストと呼ぶことにしよう。また,例えば我が国の草地の場合,放置しておくと木本性の植物が優占して森林に遷移していくため,草地の草資....

38 高知論叢 第97号トが必要になる。これらをあわせて(A)資源系の囲い込みコストと呼ぶことにしよう。また,例えば我が国の草地の場合,放置しておくと木本性の植物が優占して森林に遷移していくため,草地の草資源を有効に活用しようとする場合,毎年火入れをして野焼きを行い,遷移を止めて草本の発育を促す作業が必要になる。その際には,火入れに先立って延焼を防ぐための輪地切り,輪地焼きなど膨大な作業を行う必要がある(註3)。このような種類の(B)資源系の維持・管理コストも資源の種類によっては管理組織が負担する必要がある。以上,(A)(B)は,オープンアクセス状態を避け,一定の利用ルールの下,有効に自然資源を利用しようという場合,必ず必要になるコストであると考えられる。 原理的に考えるならば,これらのコストを負担し,自然資源を管理し利用するのは,共同体に限らず,個人でも構わないはずである。しかし,資源系からの収益が比較的薄く,また空間的に広大な範囲に広がっていてその囲い込みのコストが比較的高くつく山野河海の自然資源に関しては,地理的に近い地縁共同体全体で管理することが合理的であったと考えられる。地域住民が日常的に入り会うようなケースでは,住民の相互監視により(A-2)のモニタリングコストを節約することが可能である。また,飯國〔8〕が輪地切りの例で指摘したように,(B)の資源系の維持・管理コストも多くの住民が協力することにより大幅に合理化することができる(註4)。しかし集団で資源系の管理を行おうという場合,成員が納得する形で利用ルールを定めたり,成員間のコンフリクトを調停したりするための,(C)利用管理組織の形成・維持コストが別途必要になると考えられる。(A)~(C)の3 つはCPR の長期持続的利用のためのコストと考えることも可能である。いま(A),(B)は集団のサイズが大きくなれば成員一人当たりが負担するコストは概ね逓減していくが, 逆に(C)は集団のサイズが大きくなるほど逓増していくと考えられる。 コース〔1〕は市場での取引コストを節約するために企業組織が生じると論じたが,それとパラレルな形で,(A),(B)のコストを節減すると共に,広く薄く分担するためにCPR の管理組織が生じると考えることができるのではないか。経済学では,例えば湖の水産資源の乱獲を防ぐためには,単一の経済主体に所有権を設定し,経済主体の長期的な利益最大化行動により資源を管理させるの