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海のコモンズの現代的可能性39が有効であると考える。しかし実際問題としては所有権の設定自体が大問題であり,例えば背後に強大な力を持つ国家や権力の存在が必要となる。田畑など,租税徴収を通じて国家財政の礎に....

海のコモンズの現代的可能性39が有効であると考える。しかし実際問題としては所有権の設定自体が大問題であり,例えば背後に強大な力を持つ国家や権力の存在が必要となる。田畑など,租税徴収を通じて国家財政の礎になるような領域ではきちんとした所有権が成立しても,資源からの収益が比較的「薄い」山野河海のような領域ではまず空間を囲い込み, 領域の排他的利用を可能にすることから始めなければならない。その領域と重なる,あるいは近接する地縁共同体が管理主体となれば,そのような囲い込みコストはかなり節約することが可能になる。例えば,その資源のことを一番よく知るのは,やはり日常的にその資源を利用する地域住民である。日常の地域住民の資源利用は,お互いの視線にさらされながら(相互監視),同時に資源の現状を把握(すなわりモニタリング)するということでもある。取引コストの節約が企業組織の発達を促したのと同様に,CPR 管理組織の発生は(A)(B)のコストの節約と関係していると考えることは可能であろう。 このような管理組織を考える場合,節約されるコストとは逆に,(C)のような組織のコストが生じる。例えば上田〔26〕は,Olson〔18〕のグループアクションの論理を引いてCPR 管理組織立ち上げに関わる社会的合意コストについて論じ,合意に参加しなければならない成員の数が多いほど(集団のサイズが大きいほど),また協調行動の必要性を認識している成員が少ないほど合意コストは大きくなり,このコストを自発的に引き受ける主体(政治的起業家)なしには合意の形成は困難になると指摘した。この社会的合意コストは,ムラなどの既存の共同体がCPR 管理組織に横滑りすることにより大きく節約することができると考えられる。 Ostrom〔19〕は,歴史的・地理的にさまざまな時点・地点で生じたコモンズを検討し, 長期的に持続するCPR の管理組織から, 以下のような設計原理を抽出した。1 . 明確に定義された境界2 . (CPR の時間的・場所的・技術的)占有ルール,(管理に必要な労働,原材料,お金の)提供ルール,及び地域的条件の間の調和3 . 集団的選択の話し合い: 運用ルールに関して最も影響を受ける諸個人が