097号

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42 高知論叢 第97号ような資源は資源自体が境界を越えて移動する,(2)資源がその生活環(ライフサイクル)の中で形態を変化させつつ異なる場所を移動しつつ生育することが多く,その資源量が全く異なる場所の異な....

42 高知論叢 第97号ような資源は資源自体が境界を越えて移動する,(2)資源がその生活環(ライフサイクル)の中で形態を変化させつつ異なる場所を移動しつつ生育することが多く,その資源量が全く異なる場所の異なる条件に規定される場合がある,(3)さらにそれらの条件が海洋の大域的な条件変動と関連している場合があり(レジームシフトの問題),資源が当該地域をこえた大域的な条件に規定されている場合がある,といった特徴である。 第四に,海洋という空間の特性に起因するもので,資源の状況,特に資源の変化と人間の関与の関係が見えにくいという観察困難性という特徴である。 これらの性質は,いずれも資源の劣化や過剰利用の問題につながりやすい。例えば,再生可能資源ということで持続的な利用を目指すにしても,外部連関性や観察困難性という性質から,資源の維持や再生のメカニズムがわかりづらく,最適な利用量(あるいは汚染許容量)を見いだすのが困難な点が上げられる。またオープンアクセス性/ 排除困難性という性質から,仮に最適な利用量がわかったとしても,利用者全体としてその範囲で資源を利用するのが困難であると考えられる。 所有権アプローチによる解決を目指そうという場合も,海洋という空間の特質から所有権や管理権を設定しづらく,何らかの主体が責任を持って管理するには相対的に大きなコストがかかる。資源の態様にもよるが,多くの漁業資源はそのようなコストを集団によって負担する,集団的な管理によって利用されてきた。ただその場合も,観察困難性や外部連関性という性質から,資源の劣化の原因を特定するのが難しく,何らかの管理組織を形成し集団による管理を目指したとしても,集団の合意形成コストはかなり高くつく,などの隘路が予想される。 このような海洋自然資源の特性は,CPR としての特徴を満たしていると共に,CPR の長期持続的コストについて, 陸域の資源と異なるコスト構造を規定しているものと考えられる。漁業資源においては,資源系の維持・管理コストはあまり問題ならないことが多いため,本節では特に資源系の囲い込みコストに注目し,歴史的に展開してきたいくつかの漁場利用形態を取りあげ,資源の特徴と漁場の利用形態,権利のありようなどを検討する。