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海のコモンズの現代的可能性45イサキ漁は, 昼間セやソネの周りで船を動かしながら釣り糸を引くイサキ昼間ひき縄漁, 夜間にセやソネの周りに船をいかりで固定し水中灯で小魚を集め,その小魚を食べに集まるイサキを....

海のコモンズの現代的可能性45イサキ漁は, 昼間セやソネの周りで船を動かしながら釣り糸を引くイサキ昼間ひき縄漁, 夜間にセやソネの周りに船をいかりで固定し水中灯で小魚を集め,その小魚を食べに集まるイサキを釣るイサキ夜間釣り漁の二種類が行われる。前者の漁はルールさえ守れば小値賀島の漁師は誰でも新規に参入することが可能だが,後者は,アジロと呼ばれる,個々の漁師が独占的に使用する海上の特定の点がイサキ夜間釣り漁を行う漁師ごとに厳格に決まっており,その他の漁師は勝手にアジロを使えない。葉山〔7〕によれば,このような状況は1970年頃から段階を踏んで徐々に形成されたという。すなわちイサキ夜間釣り漁は小値賀島では1970年頃から営まれるようになり,非常に効率のよい漁法であったため,イサキ釣り漁師の大半はこの漁法に移行した。この漁法の特徴として,イサキのよく釣れるセやソネのアジロを一晩一隻の船が独占的に使うことがある。この漁を行う船の近くで同じ漁が行われると,水中灯の光が干渉し合ってイサキが釣れなくなるためである。1975年頃まではアジロの利用は早い者勝ちで誰でも自由にこの漁を行うことができたが,やがてアジロに数隻の船が順番待ちをして並ぶという状況が現出した。順番待ちの間は漁をすることが許されず,漁師はひたすら自分の番を待つしかなかったが,自分の番が来た時に,たくさんイサキが釣れるという保証もなかったため,やがて漁師は盛んに新規のアジロを開発するようになった。このアジロ探しは,場合によっては1 ~ 2 ヶ月かかることもあり,しかも見つけた場所も継続的に漁が行えるよいアジロかどうかはしばらく漁を続けてみなければわからなかったため,アジロは発見したものが優先的に使うという暗黙の了承が漁師の間に形成された。1985年頃から,アジロは急速に個人が独占的に使うものに変化し,1990年頃には小値賀町漁協の総会によりアジロを一週間に限って一人の人が独占的に使うことが認められた。しかし,この後漁船をアジロに固定をしたままにして,漁師本人は小舟で港とアジロを行き来する方法が一般化し,常に特定の個人が一つのアジロを使い続けるという状況が現出した。このような過程を経て,アジロは個人のものであるという暗黙の了承が漁師の間で共有されるようになった。現在ではアジロに船を固定しておくことはなくなったが,アジロを使うイサキ漁師はイサキの釣れない4 月はじめからアジロで水中灯を照らし場所取りを行うなどさ