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海のコモンズの現代的可能性47(3) 漁場の利用形態と囲い込みコストの関係 熊谷・篠原編〔13〕(p. 10)は,経済学における資源の概念を検討する中で,「人間が,社会生活を維持向上させる源泉として働きかけの対....

海のコモンズの現代的可能性47(3) 漁場の利用形態と囲い込みコストの関係 熊谷・篠原編〔13〕(p. 10)は,経済学における資源の概念を検討する中で,「人間が,社会生活を維持向上させる源泉として働きかけの対象となりうる事物である。(中略)働きかけの方法によっては増大するし,減少もする流動的な内容を持っている。欲望や目的によって変化する」という定義を紹介し,自然資源の対象と範囲が技術や経済社会の変化により大きく変化するという可能性を指摘している。すなわち,さまざまな技術や,あるいは消費者の選好の変化により,資源の価値や利用形態は変化するため,何が価値ある資源かは,これらの要素とセットとして考える必要がある。特に前述の通り,多くの漁業資源は移動性を持つため,人間から資源の働きかけの手段や方法,すなわち漁法や漁具,漁業技術と密接に関連しており,これらの違いや変化により資源としての態様は変化する。前小節のイサキ漁の事例でも,同じ場所でも時間や漁法・漁具の違いによって権利の内容は区別されていた。漁場や漁業テリトリーの権利も,海面の空間的位置だけではなく,季節や時間,漁法・漁具を含む形で定義されることがあるという点には注意が必要である。 橋村〔6〕は,(1)経済的価値が高く,位置固定・排他的独占的占有利用の必要性が高い漁場,(2)経済的価値が高く,位置固定・排他的独占的占有利用の必要性が低い漁場,(3)経済的価値が低く,位置固定・排他的独占的占有利用の必要性が高い漁場,(4)経済的価値が低く,位置固定・排他的独占的占有利用の必要性が低い漁場という,経済価値,位置固定か不定か,排他的独占的占有の有無に着目する二野瓶〔16〕(p. 3-4)の分類を踏まえつつ,以下の3 種類の区分から漁場利用の特徴を捉える枠組を提起した。すなわち,(1)漁場の権利からの区分(個人持ちの網代(アジロ), 漁村(浦)や村が領主への徴税負担のために沿岸を分割して占有する村(浦)持ちの地先漁場, 一村に帰属しない複数の村や漁業者による入会漁場),(2)「追う」漁業技術か,「待つ」漁業技術か,あるいはその組み合わせか,(3)漁場の形態の特徴(「点」の網代か,地先漁場のような「面」的な海面分割か,あるいは沖合の一本釣りや網漁のような「線」的に移動する漁業か),の3 つの軸である。これを踏まえ,橋村〔6〕の終章第2 節では,漁場を(1)魚の集まるポイントでの網代漁場,(2)漁村が占有する沿岸の区画