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50 高知論叢 第97号漁場は特定の個人や網組によって利用されるため,利用集団のサイズも比較的小さいと考えられる。それに対して沖合漁場は複数の村が入り合うため,利用集団のサイズは最も大きくなると考えられる....

50 高知論叢 第97号漁場は特定の個人や網組によって利用されるため,利用集団のサイズも比較的小さいと考えられる。それに対して沖合漁場は複数の村が入り合うため,利用集団のサイズは最も大きくなると考えられる。地先漁場は単一の村により利用されるため,利用集団のサイズは両者の中間になるのではないか。 このように整理してくると,資源系の囲い込みコストが大きくなるにつれて,漁場を利用する集団のサイズも大きくなる傾向があることが見て取れる。(4)小  括 本節では,海洋自然資源の一般的な特徴を検討した上で,陸上の資源と異なる性質を持つ漁業資源の利用形態がどのようなメカニズムで形成されてきたかを概観した。それにより,漁場を占有し利用の権利を主張するためには,「自力」により,時に武力や暴力を伴う形で用益事実を保全し利用実績を継続することが重要であり,その過程自体,漁場を保持する共同体が資源系の囲い込みコストを負担していると解釈することができるという点を見出した。その上で,橋村〔6〕の分類による網代漁場・地先漁場・沖合漁場の3 つの漁場利用形態を取りあげ,その漁場利用の特徴を検討し,それぞれの漁場での資源系の囲い込みコストを比較検討した。その際に,囲い込みコストが大きくなるにつれ,当該資源系を管理する集団のサイズも大きくなるのではないかという仮説を念頭に,歴史的に形成されてきた権利のありよう,特にその権利を保持する集団のサイズと,囲い込みコストの関係を検討した。その結果,資源系の囲い込みコストが大きくなるにつれて,漁場を利用する集団のサイズも大きくなる傾向があることが確かめられた。前節で提起した,CPR の長期持続的利用のためのコストという分析枠組の内,資源系の囲い込みコストの考え方は,漁業による海洋自然資源の利用形態を検討する上で,一定の妥当性があるといってもいいのではなかろうか。 以上の検討を踏まえ,次節では高知県柏島のサンゴの海をめぐる問題を事例に,歴史的に海面を利用し,これらの資源系の囲い込みコストを負担してきた漁業集団が,その歴史的な漁場の利用実績を背景に持つ力を検討する。