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海のコモンズの現代的可能性514. 高知県柏島のサンゴの海をめぐる問題(註12) 高知県幡多郡大月町の柏島は,四国西南端に位置する面積0.57?,周囲3.9㎞の小島である。人口は1950年には259世帯1,346人を数えたが,2....

海のコモンズの現代的可能性514. 高知県柏島のサンゴの海をめぐる問題(註12) 高知県幡多郡大月町の柏島は,四国西南端に位置する面積0.57?,周囲3.9㎞の小島である。人口は1950年には259世帯1,346人を数えたが,2007年現在215世帯515人まで減少し,いわゆる過疎・高齢化が進んでいる。柏島は,豊後水道と黒潮の両方の影響を受け,温帯域にあるにもかかわらず熱帯・亜熱帯域と温帯域の魚類が混生している。広範囲にわたって造礁サンゴ群集が発達し,その規模はトカラ列島以南と小笠原諸島を除く日本沿岸で一,二のものである。また143科884種もの魚種の生息が確認され,未記載種・日本初記録種として報告が保留されている42科103種と合わせると千種近い魚種が生息していることになる。これは日本で現在確認されている魚類3 千6 百種余の1/4にあたり,この海域は日本一多様な魚類相を誇っていると言っても過言ではない。この生物多様性のみならず,魚類の資源量も豊富で,この海域は古くから様々な漁業を育んできた。また美しい水中景観に加え,ピグミーシーホースやニシキフウライウオ,イナズマヒカリイシモチ,キツネメネジリンボウといった希少な魚類も見られることから,近年この海域はダイビングスポットとして有名になり,県内外から多くのダイバーが訪れるようになった。 柏島でダイビング案内業が商業ベースに乗り,島外の業者が本格的に進出を始めたのは1992年頃のことらしい。何度か断続的に立ち上がったダイビング事業者の団体の名簿等を検討するに,柏島のダイビングポイントを利用する業者は,1994年には5 業者(うち1 軒は島外にショップを構える業者)だったのが,1997年には10業者(同3 ),2000年15業者(同3 ),2003年20業者(同5 )と順調に増加し,2004年1 月現在22業者(同8 )に達している。年間ダイビング客数についての正確な把握は困難だが,1994年には3 千人程度という推計がある(大月町資料)。客数は最盛期には5 万人近くに達し,現在は1 万人から1 万5 千人のレベルで推移しているというのが,多くの関係者の見方である。 このように柏島に多くのスキューバ・ダイビング客が集まるにつれて様々な問題が起こるようになった。まず問題になったのは漁業者との軋轢である。は