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54 高知論叢 第97号しているが,この間の経緯もあり,明文化されたルールの合意やクローズされたポイントの開放には至っていない。しかし関係者の努力が実り,2005年9 月に,すくも湾漁協内に関係する支所(柏島,....

54 高知論叢 第97号しているが,この間の経緯もあり,明文化されたルールの合意やクローズされたポイントの開放には至っていない。しかし関係者の努力が実り,2005年9 月に,すくも湾漁協内に関係する支所(柏島,一切,安満地,泊浦)の理事を構成メンバーとするダイビング委員会が発足し, 今後はこの場でダイビング側との交渉が行われることになった。この間,長い間,正式な交渉の場さえなかったことを考えれば,大きな前進であるといえるだろう。このような交渉がうまく運び, 柏島周辺海域のダイビングに関するルールが包括的に合意されることは,単に業者の営業上の利益の問題を超え,海洋環境保全の面でも大きな意味を持つ。 現在柏島で利用できるポイントは,後の浜・竜の浜の二つのみである。竜の浜は初心者向けのポイントであるため,現在,後の浜が最も重要なポイントになっている。そのため連休等の繁忙期には,後の浜の500m の幅に設置された10個のブイに十数隻のダイビング船が連なり,海底には100人を超えるダイバーが入り乱れるという状況が現出する場合もある。この「ダイビング圧」によりサンゴをはじめとする海洋生態系に悪影響が及ぶ可能性が指摘してされている。後の浜へのダイバーの集中はこのポイントのサンゴ群集生態系を大きく疲弊させており,その他のポイントへダイビングを分散させて生態系への負荷を緩和することは喫緊の課題になっている。 自然環境の持続的利用を考えるならば,沖縄県の座間味島で行われたようにポイントを閉鎖して数年間生態系を休ませることも必要になるかもしれないが(原田他〔4〕参照),そのようなことを行うためには業者間の合意が必要になる。このような合意は営業上の不利益が最小限になるようポイントの振替等を行うことが前提条件になるため,柏島周辺海域のダイビングポイントの開放と,海域全体の利用を包括的に調整するルールが不可欠であると言えるだろう。しかし,一部のダイビング業者の機会主義的な行動とダイビング業者組織の内紛によって培われた,柏島の漁業者側の不信は未だ解消されておらず,他の地先のような協定締結には至っていない。 ただ,このような漁業とダイビングの海面利用調整の経緯からは,もう一つ漁業者側の発言力の強さが印象づけられる。法的には漁業者が漁業権行使者であることからこれを説明することになるのだろうが,しかし,漁業権は水面を