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海のコモンズの現代的可能性55「排他的,独占的に利用すること」を認めている訳でなく,あくまで認可された一定の漁業行為を行う権利にしか過ぎない(浜本〔3〕参照)。漁業の妨げになるといって,事前に利用調整を....

海のコモンズの現代的可能性55「排他的,独占的に利用すること」を認めている訳でなく,あくまで認可された一定の漁業行為を行う権利にしか過ぎない(浜本〔3〕参照)。漁業の妨げになるといって,事前に利用調整を行ったり事前・事後に損害に対する補償金を請求したりすることは可能であろう。しかし,当然のことではあるが,特定の海域でのダイビングを全面的に禁止する権利があるとは法律の文言からは読みとれない。にもかかわらず,その主張は地域社会で当然のものとして受け止められ,ダイビング側も自主規制という形でこれを尊重せざるを得なかった。 前述の通り,わが国の漁業権制度は,江戸時代に確立した「一村専用漁場」慣行にその淵源を持つと言われている(浜本〔3〕参照)。「一村専用漁場」慣行では,船の櫂が海底に届く沿岸部は地元の漁村が独占して利用する漁場(地付き)とし, 漁村集落の総意によって定められた漁場の利用方法(漁場の口開け,口留め,輪番等)に従い地元の漁民が利用する。そしてまた前述の通り,漁村の持つこのような漁場利用に関わる権利が,中世以来あまたの争論を経て慣行化していったものである,浜本〔3〕は,「一村専用漁場」は海の入会権そのものであり,その場所は地元の漁村が支配し使用する場所であって,漁村による漁場の「所持」(漁村の集落民が共有で所有し,漁村全体で管理している土地=漁村集落の共有地)に他ならないとしている。しかしこの「一村専用漁場」慣行は,1901年に制定された漁業法により整理され,部落漁民が設立する漁業組合に対し単なる地先水面で漁業を営む権利, 一種の営業権を免許する形に移行しており,近代化以前の海面の入会的支配・所有側面は消失したと考えられている。ただ,池田〔10〕のように「営業権を除く入会慣行」(地先権)は,「公序良俗に反しない限り,未だ法的に実効性を有する」という有力な見解も存在する(註16)。柏島の漁業者の権威は,ある意味法律や経済的地位を超えて地域社会で力を持っていると言えなくもない。これは歴史的に柏島の海を占有し一定のルールの下で漁業を営んできた伝統的な漁業入会=コモンズが育んだ一種の社会関係資本といえるかもしれない。