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56 高知論叢 第97号5. おわりに 前節の議論は以下のようにまとめることができる。すなわち,新たな技術によって成立したスキューバ・ダイビングを中心とするツーリズムがサンゴの海の新たな利用形態として拡大し,....

56 高知論叢 第97号5. おわりに 前節の議論は以下のようにまとめることができる。すなわち,新たな技術によって成立したスキューバ・ダイビングを中心とするツーリズムがサンゴの海の新たな利用形態として拡大し,伝統的な利用形態である漁業とある種の競合を起こすようになると共に,自然環境にも負荷をかけるようになった。しかし新規の利用形態の内部では,なかなか自然資源の持続的利用を可能にするようなルールを成立させることができなかった上,漁業とのコンフリクトは,漁業者側によるダイビングポイントの閉鎖を通して自然環境により負荷をかける方向にダイビング産業を陥らせている。柏島のサンゴの海にワイズユースに関する課題は,ダイビング業者の機会主義的行動を押さえ,一定のルールに基き,ダイビングの負荷を分散してサンゴ群集生態系に悪影響を及ぼさないようなダイビングを実現することであるが, 皮肉なことに漁業者の持つ伝統的な権威(=伝統的な漁業コモンズが育んだ一種の社会関係資本)がある意味そのようなルールの実現を阻む一要因になっているという状態である。 しかし,旧来の漁業コモンズ持つ社会関係資本が,逆に海域利用の統合的ルールを生み出す力になるケースもある。最後に,沖縄県恩納村の事例を検討しよう(註17)。 恩納村は沖縄本島の中心部,那覇市から車で一時間程度の場所に立地している。沖縄の本土復帰を機に1970年代から大型リゾートホテルの進出が相次ぎ,建設工事による赤土の流出や,ホテルによる特定海域の囲い込み(レジャーによる排他的利用を主張)などの問題が発生した。1968年には漁業者が漁船を連ねて海上デモなどを行う等,ホテル側と漁業者側の間で大きな軋轢が発生した。このような対立を解消するために,村の仲介で海面利用調整協議会が立ち上げられ,恩納村漁協とリゾートホテルの間で海面利用に関する協定が策定された。 そこで合意されたルールは,(1)漁村地域振興のルール,(2)地域連携のルール,(3)海の「自由利用」ルールの三つにまとめることができる。(1)はリゾートホテル側が漁業振興金を支出し,海ぶどうなどの新しい養殖技術の開発や施