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海のコモンズの現代的可能性57設建設,サンゴ礁海域の保全活動の原資とするものである。(2)は,ダイビング事業者が船を使用する時は地元の漁業者から必ず傭船する,ホテルがクルーザーなどを購入する場合はそのキ....

海のコモンズの現代的可能性57設建設,サンゴ礁海域の保全活動の原資とするものである。(2)は,ダイビング事業者が船を使用する時は地元の漁業者から必ず傭船する,ホテルがクルーザーなどを購入する場合はそのキャプテンとして漁業者を雇用するなどのルールである。(3)は海洋レジャー側が沿岸域やホテルの前浜を「自由」に使用できる,というものである,海洋レジャー側は(1)(2)と引き替えに(3)を得る形であるが,(2)によって,レジャーのために運行される船舶は地元の海をよく知る漁業者が運航することになるため,サンゴ礁などの自然資源にあまり負荷をかけない形でレジャーが行われることが期待できる,漁業振興金はオニヒトデの駆除や排水検査などの環境保全活動へも支出されるため,その効果も期待できる。ただルール策定の前後でサンゴ礁の状態がどのように変化したかという科学的データはとられていないため,このようなルールが自然資源保全にどの程度役立っているか確実なことは言えない。しかし,地域社会として海洋レジャーによる負荷をコントロールする仕組みを有している分,柏島よりも進んでいる点がある。 この事例が浮き彫りにするのは,柏島同様漁業者集団が地域社会において一定の権威と実力を持っており,外来のツーリズム産業と拮抗し,海面利用に関わる統合的ルール策定の中心的存在になった点である。 また,沖縄県座間味村においてダイビング業者の組織(座間味ダイビング協会)が漁協と協力して,ダイビングや漁業を1 ~ 3 年自粛し,ポイントを休ませる区域を設定する,重点区域を決めてオニヒトデの集中的な駆除を行うなどの保全活動を行っている(原田他〔4〕参照)。座間味においては多くのダイビング業者が元漁業者であり,漁協組合員であったため,そのような協力関係は比較的スムーズに構築し得たようである。 以上見てきた柏島,恩納村,座間味村の事例は,ツーリズムによるサンゴの海の利用を調整し,保全と持続的利用のためのルールを構築するためには,その海を伝統的に利用してきた漁業者集団の理解と協力が不可欠であるということを示している。また恩納村と座間味村のケースでは,ツーリズム側の得る利益が,漁業者とあるいは地域社会全体にうまく還元され,循環する仕組みができている点も注目される(婁他〔20〕,原田他〔4〕)。