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58 高知論叢 第97号 近年,我が国においてもサンゴ礁・サンゴ群集の保全が注目されているが,国内のサンゴの海では,多くの場合その海を伝統的に利用してきた漁業者集団が存在する。サンゴの海の保全と持続的利用....

58 高知論叢 第97号 近年,我が国においてもサンゴ礁・サンゴ群集の保全が注目されているが,国内のサンゴの海では,多くの場合その海を伝統的に利用してきた漁業者集団が存在する。サンゴの海の保全と持続的利用を図るルールを構築するために,そのような伝統的な利用者集団の力をうまく活用すれば,第2 節の議論でいう(A)資源系の囲い込みコスト,(C)管理組織の形成・維持コストを節約することが可能になる。そのためには,ツーリズムという新たな形の資源利用の果実をどのように地域社会に還元していくのかという点が鍵を握るのではなかろうか。註1 ) ワイズユースの概念は, サンゴ礁を含む湿地(wetland)の保全を目的とするラムサール条約において基本原則として採用されている(第3 条1 項)。ワイズユースとは,生態系の自然特性を変化させないような方法で,人間のために湿地を持続的に利用することであると定義されている。またここでの持続的な利用とは,将来の世代の需要と期待に対してwetland が対応し得る可能性を維持しつつ,現在の世代の人間に対して湿地が継続的に最大の利益を生産できるように,wetland を利用することである。ラムサール条約第4 回締約国会議勧告 4. 10 附属書「賢明な利用という概念を実行するための指針」(http://www.biwa.ne.jp/~nio/ramsar/cop4/key_guide_wiseuse_j.htm)を参照。2 ) 本節の一部は,新保〔23〕第4 節を改稿したものである。3 ) 例えば,図司〔28〕,飯國他〔9〕参照。4 ) 飯國〔8〕は,1 軒の農家が一辺1 の正方形の形で輪地切りを行った場合,面積1の範囲を野焼きすることができ,3 軒の農家が独立してこの作業を行うと面積3 の範囲を野焼きすることができるが,3 軒が協力すると,一辺3 面積9 の大きな正方形を同じ労力で輪地切りすることができ,一気に2 乗の面積を野焼きすることができると指摘した。5 ) たとえば,飯國他〔9〕の島根県三瓶山の事例を参照のこと。6 ) 高桑〔25〕に先立つ葛野〔14〕は,昭和58年の福井県越前海岸の現地調査を元に,(a)「公海として各浦の漁師が自由に操業できる」沖浦空間,(b)「浦間そして,浦内の漁民間に所有や使用権の意識行使があり,これを陸地の土地所有制度や親方-子方制度等の社会構造が支えている」中沖空間,(c)「漁場に加えて,各浦独自の歴史的・宗教的意味を帯び,それ故に,女性を含む全村民の平等で共同な空間であり,また,小舟や板舟(イカダ)で現地を動き回って認識される」磯場空間の3 つの区分を提起している(葛野〔14〕, p. 104)。高桑〔25〕の区分との対応を考えると,(a)は沖・沖合漁場に相当し,(b)(c)はイソやチサキ(地先)・磯漁場に相当するものと思われる。高桑〔25〕は敢えて(b)(c)をひとまとめにして捉えているが,(c)の磯場空間は場所