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海のコモンズの現代的可能性59としてはウニ・サザエ・アワビ・ワカメ・ノリ等の磯物が豊富な,我々が通常想起するような「磯」―水際の石や岩の多い場所―であり,そこで行われるワカメ漁やウニ漁には女性も参加でき....

海のコモンズの現代的可能性59としてはウニ・サザエ・アワビ・ワカメ・ノリ等の磯物が豊富な,我々が通常想起するような「磯」―水際の石や岩の多い場所―であり,そこで行われるワカメ漁やウニ漁には女性も参加できるなど,興味深い特徴を有している。7 ) 「中世には「両方山の懐内は,その浦にて漁仕る」とか,「磯海は陸地に就て進退せしむ」という,磯海=浦の地先水面はその地元の浦のものとみなす」慣行が広く形成され,「浦々の習」,「浦々の大法」と呼ばれていたという。藤木〔2〕p. 260参照。8 ) 定兼〔21〕参照。p. 207からp. 208にかけてこの法令が抄出されている。また丹羽〔17〕(p. 193)は,それに先立つ元文2(1737)年11月の「三奉行伺の上,評定所の御定書」においてすでに同様の「海川入会の争議裁許の基準規定」が成文化されていることを紹介し,これが「それまでの幕府裁定方針の集大成であり,各地海川入会の実態を反映したもの」と指摘している。丹羽が掲出している12の規定から本稿に関係するものを紹介すると,「(1)磯猟は地付次第なり,沖は入会,(2)漁猟入会場国境差別なし,(3)村並の猟場は村境を沖へ見通し,猟場の境たり,(中略)(8)漁猟場の障りに成に於いては,藻草苅これを禁ず(後略)」などがある。また10~12の規定は例外規定であり,海石・浦役永(租税や賦役の類である)を負担する浦方は「磯猟は地付次第」という原則の例外として村の前の地先の海へも入会うことができるという例について言及している(丹羽〔17〕p. 193-195)9 ) 山アテとは,山ダシ,山ダメとも呼ばれ,「山や高木,岬の突端など,海上から目だつ陸上の標的物をいくつか重ね,重なった線を海上にのば」し,「観測定点の異なる,これら何本かの線の重なり具合により自分の船の位置や漁場の位置を確定する」,我が国の漁民の伝統的な「位置測定の技術」である(高桑〔25〕,p. 128)。10) 以下,この段落の小値賀島のイサキ漁に関する記述は葉山〔7〕に拠る。11) 私的所有権の根拠の4 項目は,森村〔15〕, pp. 44-45より引用した。12) 本節は新保他〔24〕の一部を大幅に改稿したものである。また柏島の海の自然環境の説明は神田〔11〕に拠った。13) ダイビング船のブイへの係留が徹底されることにより,サンゴ破壊の問題はひとまずやんだと考えられる。14) この当時の柏島漁業協同組合は,2001年1 月の漁協の広域合併により現在はすくも湾漁協柏島支所になっている。15) 柏島ではダイビング関係の入込客の増加によりさまざまな問題が起こった反面,2005年の段階で漁業生産に匹敵する額(推定)のお金が落ちている。しかし,それは基本的にダイビング業者と一部の民宿のみの手に入る構造になっており,その他の住民はデメリットのみを被る形になっている。ダイビング業者には島外出身者が多いこともあり,この点が業者と漁業者・地域住民の感情的対立の遠因にもなっている。町当局は,他地域の事例等も参考にして「ダイビング業者がローテーションで(登録した)漁業者の船を傭船してダイビング・サービスを行う」等のルール案を以て調停に入り,この時期より後しばらくはそのような形で実施された。町によるこのような調停は,たとえば沖縄県恩納村では功を奏したが(婁他〔20〕参照),柏島