097号

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63 論 説戦争論の系譜(1)―― 統帥権独立をめぐって ――田  村  安  興  目次序1. 君権と戦争に関する思想(本号)2. 明治憲法と統帥権(次号)3. 軍と天皇親裁の建前結序 統帥権とは,陸軍参謀本....

63 論 説戦争論の系譜(1)―― 統帥権独立をめぐって ――田  村  安  興  目次序1. 君権と戦争に関する思想(本号)2. 明治憲法と統帥権(次号)3. 軍と天皇親裁の建前結序 統帥権とは,陸軍参謀本部長・海軍軍令部長から天皇への帷幄上奏によって,軍関係の重要事項の決定がなされる天皇大権の一つであった。しかし,統帥権独立が陸軍参謀本部,海軍軍令部の特権となった結果,統帥権は国務から完全に独立するのみならず,軍閥官僚派が政治を支配して帷幄上奏の範囲が軍政全般に及んだ。 日本語の統帥権という用語が使用される様になったのは明治初期である。それまでは天皇の軍への指揮・監督権は兵馬の権とよばれており,武士から朝廷に兵馬の権を回復することが倒幕運動の一つの目標でもあった。 兵馬の権が統帥権なる日本語に変わった歴史をたどれば,19世紀のプロイセン陸軍においてTruppenfuhrung とよばれていた,軍への統一的な指揮権をさす言葉が統帥権と訳されたことに始まる。明治憲法の第11条において「天皇は陸海軍を統帥す」と明記された結果,その概念が独り歩きしてその後の日本近高知論叢(社会科学)第97号 2010年3 月