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戦争論の系譜(1) 65ゼを提起する,「人間は国家をつくる生き物である」3。国家の基礎は家であり共同体である。人間の定義はさまざまあるが,アリストテレスの定義は至当である。何ゆえに人間は国家をつくるのかと....

戦争論の系譜(1) 65ゼを提起する,「人間は国家をつくる生き物である」3。国家の基礎は家であり共同体である。人間の定義はさまざまあるが,アリストテレスの定義は至当である。何ゆえに人間は国家をつくるのかという問いに対して,アリストテレスは動物の中で声だけではなく言葉を持っているのは人間だけだからであり,言葉こそ人間に固有の資質である。人間は言葉によって有利不利,正悪,善悪についての知覚をもつから,家や国家をつくることができると主張する。アリストテレスは,人間にとって国家は「自然にあるものの一つである……国は家やわれわれ個人よりも先にある,なぜなら全体は部分より先にあるのが必然だから」4 と述べている。アリストテレスの念頭にある国家は今日われわれがイメージする国家ではなく都市国家(ポリス)である。ポリスの人口は大きなものでも10万人を超えない。当然婦女子を含み,都市であって同時に国家である。この都市国家は一目で見わたせうる程度の規模で,城壁で囲まれており,そこでは都市がそれぞれ独立, 自由をもつものであった。軍事は自由民の特権でもあり,君主,政治の実権を握る人物にとって,軍事を掌握することは政治力そのものであった。そこでは個人―家―国家という関係が自然に発生する。その意味でアリステトテレスは人間が自然に国を作る動物であると言っているのである。 国家は軍事力,暴力装置,官僚機構をもち,自然にはない国境線を強制的に地図上に引く装置である。国境線は国家の指導者や国家体制の変貌とともに常に変化してきた。国境線の変化は戦争によって実現してきた。人間の自然的本性が国家の形成だとしたら,戦争もまた人間の本性なのだろうか,アリストテレスはそうは言っていない。アリストテレスは戦争は平和のためでなければならず,事業は余暇のためでなければならず,戦争にも平和にも人間は対応しなければならないと言う。 アリストテレスは自由人は軍隊となることができる,国家共同体の目的は功益であり軍隊の目的は戦争による功益の追及であると述べた。アリストテレスの時代において,国民権は軍人とその経験者にのみ与えられた。アリストテレ3 同上書7 頁では「人間は自然に国的動物である」という訳がある。4 同上書7 頁