097号

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66 高知論叢 第97号スが言う国家の形態は,民主制,寡頭制,独裁,貴族制,国制,僭主制,王制である。アリストテレスは王制の類型を5つの類型に分けている。英雄時代の王は将軍であり,裁判官であり,神事を司る....

66 高知論叢 第97号スが言う国家の形態は,民主制,寡頭制,独裁,貴族制,国制,僭主制,王制である。アリストテレスは王制の類型を5つの類型に分けている。英雄時代の王は将軍であり,裁判官であり,神事を司る主権者であった。アジア人はヨーロッパ人より世襲的国王に対して奴隷的であると述べた。アリストテレスの分類による王制の区分はアジアの王制に,そして日本の国家類型にそのいくつかは該当する。アジアの国家は国民が王制に対してより従順な国家であるということをアリストテレスは認識していた。民主的な国と寡頭的な国の違いは国民の性格が反映したものであり,制度が発展したものではないという。民主的性格の国民が民主的国制を作り,寡頭的性格の国民が寡頭的国制をつくるというアリストテレスの指摘は,当時のギリシアのポリスばかりを念頭にしているわけではない。『政治学』ではしばしばインドの君主にまでも言及されている。 王制における軍に関してアリストテレスは自分の廻りに軍を配置しなかったらどうして支配が可能か,と述べて王にとって徳と軍事力は前提であるとしている。しかし,アリストテレスは国王が有する軍隊を強大化させるべきだとは考えなかった点において,後世の軍事思想家とは異なっていた。軍がなければ王の支配は保障できないが,王の武力は大衆より弱いものにしなければならないと述べ,王制から貴族制,民主制へと王制の流れを述べている。君主の武力を支配のために絶対視せず,国制によって相対化したことに,後世の君主論と比べても新鮮な輝きをもっている。(2)孫子による君主と統帥論 孫子は戦争の哲学,戦術,戦略を残し,後世の軍事に多大な影響を与えた。王と将軍のありかたについても以下のように言及している。「兵とは国の大事なり…主 孰れか賢なる,将 孰れか能なる,天地 孰れか得たる,法令 孰れか行なわる,兵衆 孰れか強き,士卒 孰れか練いたる,賞罰 孰れか明らかなると,吾これを以て勝負を知る。」5 と述べて戦争に勝つためには,賢明な君主,有能な将軍,整備された法令,強い民衆,熟達した兵士,賞罰が公明,5 『孫子』金谷治訳注 岩波書店2000年4 月26頁~27頁