097号

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戦争論の系譜(1) 67という5 つの要素を挙げている。 孫子は将軍と君主の関係について次のように述べている。「夫れ将は国の輔なり,輔,周なれば則ち国必ず強く,輔,隙あれば則ち国必らず弱し。故に君の軍に患う....

戦争論の系譜(1) 67という5 つの要素を挙げている。 孫子は将軍と君主の関係について次のように述べている。「夫れ将は国の輔なり,輔,周なれば則ち国必ず強く,輔,隙あれば則ち国必らず弱し。故に君の軍に患うる所以の者には三あり。軍の進むべからざるを知らずして,これに進めと謂い,軍の退くべからざるを知らずして,これに退けと謂う。是れを軍を糜すと謂う。三軍の事を知らずして三軍の政を同じくすれば,則ち軍士惑う。三軍の権を知らずして三軍の任を同じうすれば,則ち軍士疑う。三軍既に惑い且つ疑うときは,則ち諸侯の難至る。是れを軍を乱して勝を引くという」6 孫子は,将軍とは国家の助け役である,と言う。助け役が主君と親密であれば国家は必ず強くなるが,助け役が主君と隙があるのでは国家は必ず弱くなる。そこで,国君が軍事について心配しなければならないことは三つある。以下,孫子による君主がやってはいけない行為である。①君主は軍隊が進んではいけないことを知らないにも拘わらず進めと命令したり,軍隊が退却してはいけないことを知らないにも拘わらず退却せよと命令するような事をしてはいけない。②君主は軍隊の事情も知らないのに軍事行政を将軍と一緒に行なうと兵士たちは迷う。③君主は軍隊の臨機応変の処置もわからないのに軍隊の指揮を将軍と一緒に行なうと兵士たちは疑うことになる。 また君主が勝利するためには以下の五つの大事な点があると述べている。①戦ってよい場合と戦ってはならない場合とを峻別すること。②大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通していること。③上下の意思統一に成功していること。④計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待ち受けること。⑤将軍が有能で君主が余計な干渉をしないこと。 孫子は,君主が賢明であり軍事に精通していることは重要だが,将軍との間に隙間があってはならず,意思疎通を十分にはからねばならない,将軍はあくまで君主,国を助ける立場であると指摘する。君主は軍事に余計な干渉をしてはならず,戦争はあくまで兵士,将軍に任せ,君主が指揮をしてはならない,と述べた。6 同上書50頁~51頁