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戦争論の系譜(1) 69 マキャヴェッリはメディチ家に献上するために『君主論』を書いた。マキャベリの軍事思想は『君主論』と『政略論』において君主と軍について論じている。そこでマキャベリはイタリア半島の統一....

戦争論の系譜(1) 69 マキャヴェッリはメディチ家に献上するために『君主論』を書いた。マキャベリの軍事思想は『君主論』と『政略論』において君主と軍について論じている。そこでマキャベリはイタリア半島の統一を実現するのはいかなる君主かを論じた。マキャベリは君主が統治するためには法律と軍備を重視すべきとしているが,法律よりも第一に重視すべきは軍事であることをくりかえし指摘している。軍備ではイタリア半島の統一にはしばしば君主たちが用いた傭兵軍ではなく,常備軍の編制,騎兵ではなく歩兵の重要性を強調している。司令官の軍事的統率能力はなによりもまして重要であり,血筋や権威ではなく演説の能力,勇敢さや徳が統率力を強化すると述べている。 マキャベリは『君主論』において君主と軍に関して次のように述べている。「君主は,戦いと軍事組織と訓練以外に,いかなる目的も,いかなる配慮も,またいかなる職務も,もってはいけない。つまり,これが統治者に本来由来する唯一の任務なのである」7 マキャベリは軍事が君主に帰属する本来の任務であり,軍備増強は君主の力量を強化するものであることを強調した。軍事に能力がない君主は国民から尊敬されず,君主は国家を掌握することができない。君主による軍強化方法は,軍そのものを強化することと,君主は軍と歴史を深く学ばなければならないと述べている。マキャベリは君主が貴族趣味にうつつをぬかして,軍の訓練ら軍隊の編成,教育をおろそかにすることは,君主がその地位を失うことになると強く戒めた。 マキャベリの君主論の真骨頂は特に君主と軍隊の関係において出ている。「君主が武力のことより優雅な趣味に心を向けるときは国を失うことは明らかである……国を失う第一の原因は,この職務をなおざりにすることであり,あなたがたが国を手に入れる基礎もまたこの職務に精通することである。……君主は,かたときも軍事上の鍛錬を念頭から離してはならない……すべて国家の基礎は立派な軍隊にあり,これなくして立派法律も,他のよいことがらもありえない」8 マキャベリによる君主と軍の関係は極めて明解である。君権と常備軍の関係7 マキャベリ『君主論』中央公論社1965年10月101~102頁8 同上書590頁