097号

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72 高知論叢 第97号しがたいものであった。ルソーは戦争が個人間では生じず,国家間において初めて生じる,と述べた。ルソーは,戦争とは国家間にとっては必然なものであるが,ホッブスと違って人類固有の属性では....

72 高知論叢 第97号しがたいものであった。ルソーは戦争が個人間では生じず,国家間において初めて生じる,と述べた。ルソーは,戦争とは国家間にとっては必然なものであるが,ホッブスと違って人類固有の属性ではなく,あくまで国家を形成した結果として派生したものであると述べた。 フランスにおいては中世から君主に主権が存するという思想が支配していた。この君主主権の観念はフランスなどを中心に当時の絶対王政を支える強力な根拠となっていたが,ルソーはこの観念を打破し,人民にこそ主権が存すると言う人民主権の概念を打ち立てた。人民主権の概念は,その後の民主主義の進展や普通選挙制の確立に大きく貢献した。 しかし,ルソーらのフランス啓蒙思想が影響を与えたフランス革命においては,反革命派と名指しされた者への迫害,虐殺,裁判なしでの処刑などといった恐怖政治が出現し,特にロベスピエールやナポレオンといった指導者達は,後年には独裁政治に陥った時代もあった。 社会契約説に見られるルソーの政治思想の特徴は,従来の価値観や伝統などの慣習から解放された個人を理想とするところにあるといえる。ルソーの戦争観を図示したものが図1-4である。図1-4 ルソーの戦争論個人個人戦争互いの社会契約への攻撃国家A 国家B(社会契約) (社会契約)(憲法) (憲法)人間の本性(平和) 人間の本性(平和)平和平和個人個人 ルソーは「社会状態は人類の自然から生まれる」10 というところに人間の本性を見出すが,ルソーはこの人間の社会状態から戦争を説く。ルソーが戦争について述べている論文は多くないものの,草稿のまま保存されていた論文「戦争状10 ルソー「フィロポレス氏への手紙」『ルソー全集第4巻』白水社 1978年(昭和53年)11月301頁