097号

097号 page 83/212

電子ブックを開く

このページは 097号 の電子ブックに掲載されている83ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
戦争論の系譜(1) 73態は社会状態から生まれるということ」「戦争状態についての断片」の2編において戦争について鋭い考察を加えている。これらの論文においてルソーは,ホッブスによる戦争は自然状態であるという....

戦争論の系譜(1) 73態は社会状態から生まれるということ」「戦争状態についての断片」の2編において戦争について鋭い考察を加えている。これらの論文においてルソーは,ホッブスによる戦争は自然状態であるという説に関して批判を加え以下のように述べている。「人間と人間との全般的な戦争はまったく存在しない。しかも人間という種はひたすらおたがいに相手を絶滅するためにつくりだされたわけではない」11「戦争は人々相互のあいだではまったく起こらずに,国家相互のあいだでだけ起こる……国家は自己より強大な国家がわずかでもあるかぎりは,自分は弱小だと感じるのだ。」12 と述べている。 ルソーはアリストテレス『政治学』を引用する。スパルタでは民選長官は就任するたびに奴隷たちに向かって戦争を仕掛けていた時代を事例にし,この時代においては支配者,被支配者の関係だけで戦争が宣言されていた。その時代の戦争は奴隷制度という国の制度そのものへの攻撃であったことを論証した。アリストテレスの国家論をルソー流に言い換えれば,戦争とは社会契約という国家の制度そのものが戦争の根源である,つまり戦争とは今日流に言い換えれば他国の憲法への攻撃である。 ルソーは次のように言う。「ある主権者に戦争を挑むとはどういうことだろうか。それは国家の協約とその結果生じるあらゆる現象とを攻撃することだ。つまり国家の本質はまさにこの点にあるからだ。」13 戦争の根源は, ある国が他の国の社会協約,社会契約への攻撃である。このルソーによる戦争の定義,すなわち戦争とは他国の社会契約(憲法)への攻撃,他国の社会契約を自国の社会契約に暴力を用いて変えることである,というテーゼは,古今東西の戦争に当てはまる定義であり,それは決して古臭い定義ではなく,今日の戦争まで見通すかの如き卓見であった。(6)クラウゼビッツの統帥論 クラウゼヴィッツは1780年のプロシア王国に生まれた。プロシア王国は連合11 ルソー「戦争状態は社会状態から生まれるということ」同上書所収372頁12 同上書375頁13 同上書380頁