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戦争論の系譜(1) 75この政治においては,外交上の文書の代わりに,戦闘が用いられる……政治的な視点が戦争の開始とともに完全に放棄されるのは,戦争が純粋な敵対感情に基づく必死の闘争の場合にしか考えられない....

戦争論の系譜(1) 75この政治においては,外交上の文書の代わりに,戦闘が用いられる……政治的な視点が戦争の開始とともに完全に放棄されるのは,戦争が純粋な敵対感情に基づく必死の闘争の場合にしか考えられない。しかし,戦争は,前述のように政治そのものの表現にほかならない。政治的な視点を軍事的な視点に従属させることは,不合理である。なぜなら政治が戦争を生み出したのであり,政治は知性であるのに対して,戦争は単にその手段であって,その逆ではないからである。したがって, 軍事的な視点を政治的な視点に従属させる以外にはありえない。」17「戦争が政治の一部であるとすれば,政治は戦争の性格を決定する。……あらゆる戦争は,その取り得る性格と主要な外見に関して,まずこれを生み出した政治的要因と状況から把握されなければならない……戦争は有機的な全体として見なさなければならず,個々の部分を全体から切り離して考察してはならない」18 またクラウゼビッツは次のようにも言う。「政治的な利害と軍事的な利害の間の対立は,少なくとも理論的にはもはや起こりえない」19 クラウゼビッツが理論的には起こりえないと言ったことが,20世紀の現実世界ではしばしば生じてきた。 クラウゼビッツが指摘する戦争が持つ性格,あらゆる戦争が政治の延長だとする見解は,必ずしもすべての戦争に当てはなるものではない。あらゆる戦争が政治の延長だとし,政治的行為が戦争そのものだとすると,戦闘行為の始まり,拡大,終結も,つまり戦争期間中の一切は政治力によって決定されなければならないということである。15年戦争当時の日本や,クラウゼビッツが生きたプロイセンの一時期においても,軍が政治とは別の力学で動いた時期があり,そのことが戦争の結果をより深刻なものとした。クラウゼビッツによる「あらゆる戦争が政治の延長だ」とする見解を我々は次のように読み替えて理解すべきであろう。それは,軍事行為,戦争は政治よりも優先させてはいけないと言うことである。 クラウゼビッツは次のように述べる。「戦争における重大な事象の判断や計17 同上書342~343頁18 同上書341~342頁19 同上書342頁