097号

097号 page 9/212

電子ブックを開く

このページは 097号 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
特集「コモンズの形成と環境問題」にあたって飯 國 芳 明   本特集は,コモンズの形成論理の検討及びそれを踏まえた環境問題への対策の解明を共通の課題として企画された。これは,また,諸岡慶昇教授の退職に....

特集「コモンズの形成と環境問題」にあたって飯 國 芳 明   本特集は,コモンズの形成論理の検討及びそれを踏まえた環境問題への対策の解明を共通の課題として企画された。これは,また,諸岡慶昇教授の退職に合わせた企画でもある。諸岡教授の本学着任以来の研究対象は,黒潮圏(日本・台湾・フィリピン)における沿岸域の資源管理問題にあった。その研究は,国際的な共同研究を組織しつつ,社会科学と自然科学の両面を踏まえた複合的な視点から課題にアプローチするという極めて精力的なスタイルのもとで進められた。 研究対象となった沿岸域の資源の多くは,いわゆるコモンズである。黒潮圏の沿岸域は,地域住民による共同管理が行われる場となったり,無主物とされ近隣の住民の全てがアクセスできる場として扱われてきた。日本では地域住民による入会的な共同管理が主流であったが,黒潮圏全体からいえば無主物としての利用が一般的であった。しかし,近年の漁業資源の枯渇や環境問題の深刻化を契機に,台湾やフィリピンにおいても,資源保全を目的としたMPA(海洋保護区)の指定は年々拡大傾向にあり,沿岸域の共同管理は焦眉の課題となっている。 そこで,本特集ではコモンズとしての資源系の組織的な管理のあり方を見通すための基礎的な作業として,コモンズの捉え方やその形成論理を法学及び経済学の立場から解明することを共通の課題とした。現在のところコモンズをめぐる議論は既存の学問分野を超えて活発化している反面,コモンズをいかに捉え,現代社会にいかに位置づけるかについては未整理なままであり,混乱しているといっても過言ではない状況にある。したがって,コモンズを支える論理の解明は,沿岸域の資源管理に留まらず,広く現代の資源管理や環境問題の解決策を中長期的な視野で見出すために欠かせない作業といえる。 特集は3 つの論文からなる。第1 論文である松本論文では自然資源問題には