097号

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戦争論の系譜(1) 83が国体, 霊妙の力である。他の国にてフリードリヒ大王, ナポレオン, 乃至ヒットラー無くば政戦略の統一に困難を来たすのであるが,我が大日本に於ては国体の霊力に依り何時でもその完全統一....

戦争論の系譜(1) 83が国体, 霊妙の力である。他の国にてフリードリヒ大王, ナポレオン, 乃至ヒットラー無くば政戦略の統一に困難を来たすのであるが,我が大日本に於ては国体の霊力に依り何時でもその完全統一を見るところに最もよく我が国体の力を知り得るのである。戦争指導のためにも我が国体は真に万邦無比の存在である。」31 以上のような石原莞爾の所説は,陸軍による,昭和初期の典型的な戦時国体論であり,それを図1-8に示した。石原によると,日本の国体は「国体の霊力」である天皇の聖断によって決定される万報無比の国体であるが故に統帥,政治は天皇によって完全に統合されるという。しかし,石原は最後には「政府,統帥府は連絡協調に努力すべきである」とそれが困難であることを自ら語っている。 石原莞爾は太平洋戦争直前の昭和15年5 月29日、京都義方会における講演の中で最終決戦論,最終戦争論を語った。「真の決戦戦争の場合には,忠君愛国の精神で死を決心している軍隊などは有利な目標でありません。最も弱い人々,最も大事な国家の施設が攻撃目標となります。工業都市や政治の中心を徹底的にやるのです。でありますから老若男女,山川草木,豚も鶏も同じにやられるのです。かくて空軍による真に徹底した殲滅戦争となります。国民はこの惨状に堪え得る鉄石の意志を鍛錬しなければなりません。……破壊兵器は最も新鋭なもの,例えば今日戦争になって次の朝,夜が明けて見ると敵国の首府や主要都市は徹底的に破壊されている。その代り大阪も,東京も,北京も,上海も,廃墟になっておりましょう。すべてが吹き飛んでしまう。それぐらいの破壊力のものであろうと思います。そうなると戦争は短期間に終る。それ精神総動員だ,総力戦だなどと騒いでいる間は最終戦争は来ない。そんななまぬるいのは持久戦争時代のことで,決戦戦争では問題にならない。この次の決戦戦争では降ると見て笠取るひまもなくやっつけてしまうのです。このような決戦兵器を創造して,この惨状にどこまでも堪え得る者が最後の優者であります。」32 石原莞爾はこのように,最終決戦,最終戦争ではすべての人類,家畜,草木31 同上書56頁32 石原莞爾『最終戦争論』1940年(昭和15年)5月29日京都義方会 中央公論社1993年7月10日35頁~37頁