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98 高知論叢 第98号う人づくり・組織づくり」があるとし,これら全ての課題に一様に取り組むのではなく,成功事例を多く積み上げ,その波及効果により全体の改善を図ることを目指している。取り組みの基本方向とし....

98 高知論叢 第98号う人づくり・組織づくり」があるとし,これら全ての課題に一様に取り組むのではなく,成功事例を多く積み上げ,その波及効果により全体の改善を図ることを目指している。取り組みの基本方向として,課題を整理し,「漁業所得の向上と自立経営体の育成」「海洋資源等を活かした漁村の活性化」および「人材の育成と組織の強化」を打ち出した。その上で,重点化の方向として「沿岸漁業中心へ」「生産から流通・販売へ」「ハードからソフトへ」という3 つの方向性を掲げ,この方向性にそって6 年間の具体的な取り組みを進めることとしている。漁業協同組合を大規模に合併する「県1 漁協構想の実現」と「各地域における魚価向上に係る取り組みでの成功事例の創出」の2 つの取り組みを全県レベルで最優先すべき取り組みと位置づけている。2-2. 漁業協同組合の大規模合併 沿岸海域では,これまで主として地元漁村の漁民がその地先の海を漁業権に基づいて利用してきた。漁業権は,漁業法上の物権であり,特定の海域において排他的・独占的に特定の漁業を行う権利であるが,都道府県知事の免許によって漁業協同組合に与えられるものである16。漁業権を具体的に行使するのは各漁業者であるが,免許を受ける主体として,漁業協同組合の位置付けは重い。従来,漁業権は,漁業集落単位で漁民が設立した漁業協同組合に免許されていたので,漁民の集団(多くは入会団体)がそのまま漁業協同組合の成員となっている事例が多く,その意味では経済団体としての漁協と伝統的な地縁団体としての漁業入会集団が同じ枠内に,いわば二重写しに存在していた。戦後の経済発展とともに,集落単位で設立されて活動する漁業協同組合では存続が難しい状況になって,次第に合併して規模を大きくしていったのである17が,近年の経済のグローバル化の影響を受けて,全国的に漁業協同組合のさらなる大規模な合併が相次ぐ状況となっている。高知県においても状況は同じで,県内の海16 漁業法(昭和24年法律第267号)第6 条に漁業権の種類を示した規定がある。また,同8 条に漁業権を行使する権利について規定がある。17 漁協の合併については,1960年代から既に政策レベルで促進がなされている。「漁業協同組合合併助成法」(昭和42年法律第78号)は,まさに漁協の合併を図る法律である。なお,同法は平成10年の改正で「漁業協同組合合併促進法」と名称が改められている。