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104 高知論叢 第98号変化することがないのは,ある意味で当然のことであるともいえる。が,例えば漁業者,漁船数の減少や漁法の変化といった集落内部における漁業の実体は常に変化しているのであり,その変化を見え....

104 高知論叢 第98号変化することがないのは,ある意味で当然のことであるともいえる。が,例えば漁業者,漁船数の減少や漁法の変化といった集落内部における漁業の実体は常に変化しているのであり,その変化を見えなくさせているともいえるのである。 表3 に見られるように,第1 種共同漁業権は,平成期に入って漁業を巡る情勢が急速に悪化し,漁業従事者数の高齢化,急激な減少,漁獲量,生産量の急激な落込みといった変化が見られるのとは対照的に,表面上ほとんど変化がない。免許数という外観は変化がないが,その内実はどうであろうか。県内のA地区を例にとり,権利の内実がどのように推移してきているか,次節で見ていくこととする。3-2. 漁業権の内実 高知県内のA 漁業協同組合は,2008(平成20)年4 月から高知県漁業協同組合A支所となっている。最終年度(2007年4 月1 日~2008年3 月31日)のA漁協業務報告書によれば,合併直前の正組合員数は39名,準組合員数は54名であった。水揚高は,1990年には8,600万円を記録していたが,徐々に落ち込み,近年は3,000万円程度で推移している。 県漁協への合併に際して,2007年8 月の臨時総会における議決では合併案を否決したが,同年12月に再び決議を行い,可決し,2008年4 月の県漁協発足時から高知県漁業協同組合A 支所となっている。筆者は,2009年11月-12月にA支所を訪問し,A 漁協時の組合長をはじめ関係者に聞き取り調査を行った。元組合長によれば,合併決議が可決された理由は,水揚高の低迷等経営的な要素もさることながら,組合員の高齢化が進み次世代の新規就業も望めないことから組合員の減少が進み,近い将来漁業協同組合としての要件を満たすことができない状況になりかねないということが懸念されたということが大きいとのことであった。 1949(昭和24)年のA 漁協発足当時,正組合員133名,準組合員32名,計165名の組合員がいたが,県漁協の支所となった2008年には,正組合員40名,準組合員55名,計95名にまで減少している。組合員数が大幅に減少しているが,特に正組合員数の減少が著しい。A 支所では,準組合員は事実上漁業を引退してい