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戦争論の系譜(2) 9けに直属することを建前とした武官独立組織であった。明治憲法体制は諸官による官僚統治を前提にした,天皇親裁であったが,諸官の位置づけは一様ではない。軍事費を受け取る武官の領域は臨時軍....

戦争論の系譜(2) 9けに直属することを建前とした武官独立組織であった。明治憲法体制は諸官による官僚統治を前提にした,天皇親裁であったが,諸官の位置づけは一様ではない。軍事費を受け取る武官の領域は臨時軍事費を含めると国家財政の50%から70%に及び,国家財政の圧倒的な部分は武官の聖域となった。明治憲法体制は文官に対して武官優位を前提とした建前としての天皇親裁であった。(3)中野登美雄氏の統帥権独立論明治憲法には,国家元首による兵権への禁止規定が無く,国家元首は国務大臣の輔弼の下で自ら軍を指揮できる。その限りでは立憲制下の国家元首主義と言える。平時には軍務大臣に直属する参謀総長の補佐によって主任国務大臣が元首の同意を得て軍務を掌握し,戦時には任命された総司令官によって軍は統帥され,軍の統帥権はその機関に委任される。そして,その機関は内閣の議決を経て軍務大臣の提案による。以上の様な統帥権が行使されるなら,それは立憲制下における統帥権の行使である。ところが明治以来統帥権の運用は前立憲制下のそれと大きく変わるところがなく,文官,武官による上奏,奏聞,裁可による,律令制下から連綿と続いた一連の政の継続であった。明治以前と大きく変わったところは,朝廷が幕府に代わって政治,軍事の実権を持ったところである。中野登美雄氏は,昭和初期において日本の統帥権を法制史の分野で最も体系的にかつ批判的に研究した。大著『統帥権の独立』における中野登美雄氏の所説を検討しよう。中野登美雄氏による日本法制史上の貢献は,当時の通説であった憲法における統帥権の絶対性を,比較法制史の立場から批判した事である。中野氏は統帥権の絶対化,大権化という軍部の影響を受けた当時の通説について以下のように批判した。「統帥権を以て国権の一作用とし,国法の一部とする前提に立つ以上,統帥権のいはゆる最高性は必ずや相対的意義に於いて言ふのでなければならないのであって,絶対的意義に取るべきではない……統帥権の固有性を説明し,其『国務』に対する独立を論証するがために,統帥権が