098号

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108 高知論叢 第98号の行使規則に掲げられている漁業と,現実に行われている漁業にはずれがあり,そのずれは現実に行われている漁業の種類のほうが常に少ない,といえる。ここに,権利の内実の空洞化が垣間見えるの....

108 高知論叢 第98号の行使規則に掲げられている漁業と,現実に行われている漁業にはずれがあり,そのずれは現実に行われている漁業の種類のほうが常に少ない,といえる。ここに,権利の内実の空洞化が垣間見えるのである。 また,表5 および6 についてはもう1 点,指摘しておくべきことがある。それは第1 種共同漁業権の行使の「資格」の部分である。漁業を営む者の漁業権行使について,漁業法は第8 条で「漁業協同組合の組合員(漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であつて,当該漁業協同組合又は当該漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会がその有する各特定区画漁業権若しくは共同漁業権又は入漁権ごとに制定する漁業権行使規則又は入漁権行使規則で規定する資格に該当する者は,当該漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の有する当該特定区画漁業権若しくは共同漁業権又は入漁権の範囲内において漁業を営む権利を有する」と規定しており,A 地区の漁業権行使規則に定める「家族」はその中に当然に含まれる者ではない。これは,A 地区の漁業権行使規則が間違っているということを意味しない。むしろ,共同漁業権の歴史的経緯に裏打ちされた入会権的な性質を物語るものであり,このような行使規則の中に,漁業法・漁業権の実質的な内容が表れているものと見ることができる。4 漁業権による沿岸海域管理の可能性 ここまで,沿岸海域の資源利用について,主として高知県を例にとってみてきた。 まず沿岸海域の資源利用について,海域という空間の特徴である競合性と非排除性があるところ,例えばスキューバダイビングなどのレジャー的な海の利用と従来からの漁業による海の利用が競合するところで,地域共通の資源である海域の「共」的な利用をどのように創出していけるのかという問題を検討した。大月町柏島での取り組みは,そうした利害の異なる関係者の「競合」がもたらす軋轢について,「里海」という共通の空間における新たな利用秩序を示す「里海憲章」というローカルルールを確立することによって,緩和ないし解決を図る試みであるといえる。資源の利用過剰に対して立場を超えた「共」的な価値を設定し,そこで醸成される新たな価値観に基づくルール作りを志向するとい