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戦争論の系譜(2) 11たび統帥権独立組織が設置されると,立憲制下において武官の有する強固な兵権と立法府,行政府との摩擦が生じる。統帥権独立組織は非立憲時代の遺物であり,統帥権独立組織が生まれる場合は,中....

戦争論の系譜(2) 11たび統帥権独立組織が設置されると,立憲制下において武官の有する強固な兵権と立法府,行政府との摩擦が生じる。統帥権独立組織は非立憲時代の遺物であり,統帥権独立組織が生まれる場合は,中野氏の定義の中では大元帥主義の場合だけである。統帥権が独立する事と,その統帥権が独立組織を有する事とは次元を異にするものである。統帥権独立組織とは国家元首の機能に属していた軍の指揮命令作用が, 国務大臣の権限から独立した組織の事を指す。統帥権独立組織は立法と行政, 君主が分離した立憲制度下ではありうべき組織ではない。16 しかし,統帥権独立組織は近代憲政上の過渡期においては,憲法上に根拠があるものとないものがある。統帥権独立自体が立憲制下に存在することは問題ではなく,むしろ統帥権独立は何人も拒否し能わざることである。統帥権そのものは憲法上の正態であるが,統帥権独立組織は立憲制度下ではあるべき組織ではない。統帥権が国家元首において単独に行われる組織で行使される場合は国家元首主義による統帥権独立である。戦時における国王の戦争への関与を制限されるがこれも国家元首主義と矛盾しない。国家元首の統帥権が国務大臣の輔弼のもとに行われることが, あたかも統帥権を侵害するかの如き説が戦前は通説であった。戦前の軍部とその御用学者達は,統帥権が国法の制限外にある理由として,兵権の所在が天皇に直属し,他に委任することが憲法違反であり,統帥権が国務大臣の輔弼外にあることを主張した。あるいは君主の資格を国家元首の資格と大元帥の資格とに分け,統帥権の固有独立性を主張した。統帥権独立組織がつくられた場合は,国務大臣の輔弼,参与はなく,国家元首によって単独に統帥権が行使され,参謀本部,主要兵站組織が輔弼となる。この場合のみを中野氏は統帥権独立組織とした。軍務大臣を含む国務大臣の輔弼が行われる場合は統帥権独立組織とは言わない。軍への統帥権が元首から独立し,国務大臣の補弼権限の下において行われることが憲法条規によって規定されている場合,統帥権に関する組織は立憲的組織である。その場合は,国家元首と国務大臣が共同で統帥権を行使し,統帥権の独立はなく他の一般の行政16 中野登美雄 前掲書