098号

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16 高知論叢 第98号で,軍事指導者は陸軍の政治力を政治に利用しようとしたが,将軍が大統領になったが,将軍は政争に敗れ,彼らは政党から超然とした存在ではなくなった。その後ドイツ軍の動向は,1933年から1945....

16 高知論叢 第98号で,軍事指導者は陸軍の政治力を政治に利用しようとしたが,将軍が大統領になったが,将軍は政争に敗れ,彼らは政党から超然とした存在ではなくなった。その後ドイツ軍の動向は,1933年から1945年のナチスによる権力の統合の結果,軍は政治から撤退してナチスに委ねた。統制経済下,将校の権限は排除され,軍の組織も縮小,制限され,陸軍参謀本部はナチスが指揮した。日本の統帥権独立組織が軍官僚型だとすると,ドイツ軍の統帥権独立組織は政党型であるといえる。軍の統帥権独立組織は宣言しただけでは存立し得ない。在野の組織と軍官僚組織がなければ統帥権の独立は困難となる。在郷軍人会組織は日本とドイツは同様の機能を発揮した。日本とドイツにおいてはその双方が高度に組織された支援組織であったが故に軍の統帥権が存立し得た。ハンチントンは日本が文民と軍の二重国家であったと述べたことは至当であった。(図2-2)中野登美雄氏はドイツの統帥権を称して二元主義と規定したが,ハンチントンはドイツ,日本の軍の二元制(軍政から軍令の独立)は問題としなかった。他方ハンチントンは,軍のプロフェッショナリズムという点においてドイツ軍に勝る国はないと,一時期のドイツの政軍関係をその理想像として描いている。(図2-3)日本はドイツから軍事学を学んだものの,軍のプロフェッショナリズムを欠いていた。「日本はミリタリー・プロフェッショナリズムの形式,その外殻は持っていたが,その本質は持っていなかった。日本の軍人精神はいつも大衆的イデオロギーによって支配されたままであった。」25 ハンチントンは「日本は世界中で最も政治的な軍隊をもった」26 日本の軍隊は職業倫理に欠けていた,ということがハンチントンの結論である。その理由は日本軍が大衆と一体化した職業倫理しか持ち合わせず,これに対してドイツ軍は大衆とミリタリー・プロフェッショナリズムの間で常に緊張関係にあったと述べている。ハンチントンによる所説,日本の二重国家形態説とは,文官と武官による政治支配という事は正鵠をついている。しかし,単に二重国家であること以上に問題となったことは,強固な統帥権独立組織によって軍が国家を支配する体制25 同上書 126頁26 同上書 125頁