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戦争論の系譜(2) 19ように,同年のフランス憲法では,大統領が,「親ら軍を統帥する」とあるが,国務大臣の輔弼を排除しないが,これは直ちに統帥権独立組織を意味しない。国家元首は国務大臣の輔弼の下で自ら軍を....

戦争論の系譜(2) 19ように,同年のフランス憲法では,大統領が,「親ら軍を統帥する」とあるが,国務大臣の輔弼を排除しないが,これは直ちに統帥権独立組織を意味しない。国家元首は国務大臣の輔弼の下で自ら軍を指揮できる。平時には軍務大臣に直属する参謀総長の補佐によって,主任国務大臣が元首の同意を得て軍務を掌握し,戦時には任命された総司令官によって軍は統帥される。フランスはクーデターにより,ナポレオン・ボナパルトが執政政府を樹立し独裁権を掌握した第一共和政時代,ナポレオンの失脚後には1814年のルイ18世による欽定憲法による王政復古は,その後,ベルギー,ドイツ憲法,オランダ,ポルトガル,イタリアの君主国に波及した。ルイ18世が公布した憲章では,法の下の平等,出版の自由,立法・行政・司法の三権を国王が掌握,非常大権を有し,時代錯誤の王権神授説がよみがえった。1848年のフランス憲法にも50条「大統領は軍を統帥す」とある。フランスでは政変前後においてしばしば,君主の統帥権が制限される憲法がみられる。この類型の憲法は統帥制限主義である。統帥制限主義の憲法における統帥権の位置づけは,君主の統帥権を制限する条項が特徴である。君主の統帥権に関して,これを指揮することができない事などが明記されており,この類型の憲法が成立した背景には君主と人民各層のあいだで,激しい主権をめぐる対立や内乱,クーデターがあり,その結果としてうまれた各派の妥協的憲法である場合が多い。1815年6 月29日衆議院より提出されたフランス憲法草案がそれである。同憲法では,「王は両院の同意が得られなければフランス領土内に外国軍を進駐させることはできない王,又は王位の推定継承人はいかなる場合においても,軍隊を個人的に指揮することはできない」など王に対する厳しい規制条項がある。統帥の集中を否定するもう一つの類型が多元的統帥主義の憲法である。この類型の憲法を筆者は統帥制限主義とも異なる類型として,多元的統帥主義と規定する。世界最初の憲法であるアメリカ合衆国憲法と,1793年2 月15日フランスジロンド党憲法草案がそれである。同党はほどなくジャコバン派によって追放された。同憲法案では,「陸海軍の指揮及び監督,国の防衛に関する事項は一般に内閣に賦与される。内閣は毎年立法院により定められる兵員を維持し,