098号

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20 高知論叢 第98号共和国の領土にこれを配置し,武器・装備・食糧を補給し,この事項につき必要な契約を締結し,これを処理する官吏を選任し,将校の昇進及び軍紀に関する法令を遵守させる任を負う。内閣の成員は....

20 高知論叢 第98号共和国の領土にこれを配置し,武器・装備・食糧を補給し,この事項につき必要な契約を締結し,これを処理する官吏を選任し,将校の昇進及び軍紀に関する法令を遵守させる任を負う。内閣の成員は市民により各々の初級選挙会において直接に選挙される」とある。1793年のフランス憲法もこの多元的統帥主義の類型にはいる。同憲法では「一県全体の国民軍の指揮は通常一人の市民に賦与されない。陸海軍の指揮官又は長官は戦争の場合の外,任命されない。指揮官は執政府から委任を受けるが執政府はこれを任意に取り消すことが出来る。この委任の範囲は一の戦役に限られるがこれを継続することが出来る。共和国軍の総指揮は唯一人の人に賦与されない」とある。多元的統帥主義の憲法と他の憲法との相違は統帥事項が内閣,立法府からの関与が明記されていることである。統帥事項は行政府を通じた軍官僚や君主による独占となりがちであるが,立法府と内閣が組織的に関与することによって,統帥権の私的支配を排除し国民,世論が関与する事が可能となる。最後に統帥権非記載の憲法の類型がある。これは軍自体が憲法に記載されず,したがって統帥権自体が明示されない憲法である。第一次大戦後のドイツ,第二次大戦後の日本のような敗戦国の憲法の事例がこの類型の憲法である。統帥権に関して,あえて誤解を恐れず言えば,この類型の憲法が優れた憲法であるとは必ずしも評価出来ない。それは,ドイツにおいてはナチス党の台頭を生んだことに見られるように,独裁を獲得した勢力が出現すれば,いかようにでも統帥権の濫用を行うことが可能となるからである。以下各類型別に憲法の当該箇所を引用する。1)国家元首統帥主義の憲法18世紀末のフランスにおいて最初に制定された憲法をはじめとして,日本の憲法のモデルとされたプロイセン憲法, 大日本帝国憲法などはいずれも国家元首統帥主義を明確にした憲法である。この類型の憲法は「王は国家の元首」を明確にするとともに「王は陸海軍を統帥する」ことが明記されている。また,王権についても,神聖不可侵,大臣は君主に対してのみ責任を負う,行政