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価値による剰余価値の創造371 剰余価値をうむ価値 マルクスによれば,剰余価値は,前貸しされた価値の自己増殖分である。そこから,資本とは,剰余価値をうむ価値という概念規定がうまれる。本節では,『資本論』....

価値による剰余価値の創造371 剰余価値をうむ価値 マルクスによれば,剰余価値は,前貸しされた価値の自己増殖分である。そこから,資本とは,剰余価値をうむ価値という概念規定がうまれる。本節では,『資本論』における貨殖の秘密の解法を紹介し,剰余価値発生のしくみは,商品価値の説明を論理的な前提にもつ原理を確認する。 資本は「剰余価値を生産する価値」(Kapital, Ⅱ, S. 35)と概念規定されるように,価値そのものが剰余価値をうむ主体である1)。労働力に投下された可変資本は,生産過程で必要労働をこえる付加価値をつくりだし,付加価値と労働力の価値との差額分が剰余価値を形成する。このばあい,剰余価値がうまれるのは,労働力への価値の投下に起因する。労働力の価値と交換に入手された労働力の使用価値がそれをこえる付加価値を形成するため,前者をうわまわる後者の超過分が剰余価値という特有な規定をうけとる。だから,剰余価値生成の前提は,あくまでも起点における価値の前貸しにある。価値の前貸しがなければ,付加価値の形成はあっても,剰余価値の形成は存在しない。「資本を構成するいろいろの生産物はみな商品4 4 である2)」(『賃労働と資本』国民文庫,村田陽一訳,46ページ,圏点―マルクス)というのも,おなじ趣旨である。たとえば,独立生産者の靴職人のばあい,革から長靴をつくる作業工程によって,付加価値を形成しても,労働力の支出にさいして価値の前貸しはしないため,剰余価値の形成はありえない。「商品所持者は彼の労働によって価値を形成することはできるが,しかし,自分を増殖する価値を形成することはできない。彼がある商品の価値を高くすることができるのは,現にある価値に新たな労働によって新たな価値を付加することによってであり,たとえば革で長靴をつくることによってである。…革は自分の価値を増殖したのではなく,長靴製造中に剰余価値を身につけたのではない。」(Kapital, Ⅰ, S. 180) だから,労働力に価値が前貸しされる賃労働者だけが,唯一剰余価値をうみだす主体である。換言すれば,労働力が商品形態をとる資本主義においてのみ,剰余価値が生産される。母胎としての資本と自己増殖分としての剰余価値とは,