098号

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2 高知論叢 第98号かの政体論争が関連していた。ドイツ・プロイセンは確固とした立憲君主制であるがフランス政体は,人民主権論が主流となって王政が打倒された。またプロイセンは君主制を支える官僚制度が共同体を....

2 高知論叢 第98号かの政体論争が関連していた。ドイツ・プロイセンは確固とした立憲君主制であるがフランス政体は,人民主権論が主流となって王政が打倒された。またプロイセンは君主制を支える官僚制度が共同体を管理する主体としてしっかり確立しているのに対して,フランスは直接民主主義型政治をめざすものであり,ドイツ人から見れば官僚制度がないに等しかった。明治の官僚がフランス式を排除して,ドイツ・プロイセン型を採用したことは当然の帰結であった。しかし,日本において参謀本部が設置された年は憲法に先んずること11年も前であったが,ドイツにおける参謀本部の成立は憲法制定10年後であった。この時間差が日独間で参謀本部に相違を生むことにつながったひとつの要因であった。統帥権独立の完成形態は統帥権独立組織である。統帥権独立組織とは政府の関与が及ばない軍令組織を作ることである。軍は,軍の行政組織である軍政を管轄する陸海軍省,教育・人事組織である軍監,戦時の軍事費と兵制を一手に掌握する軍令によって構成される。日本における参謀本部は1978(明治11)年に始まる。陸軍省,参謀本部と監軍部の三部制となって日本の軍制が確立した。陸軍省から独立して参謀本部を設置した経緯は別稿に譲る。山縣有朋,桂太郎へと続く長州閥と西郷従道,大山巌らの薩摩閥との対抗と結束を軸にして,政府文官を圧倒し,政府を支配するまでに陸海軍統帥部は肥大化した。本節は,日本における軍閥官僚派の肥大化過程を解明するための前提として,日本の統帥権独立の特質を,憲法の国際比較から明らかにする事が課題である。(1)ヘーゲルの官僚論と日本ドイツの官僚制に関して,最も優れた古典はヘーゲルの『法の哲学』である。官僚制についてヘーゲルは以下のように述べた。「官吏の所属する中間階層には国家のおよぶ最も優れた教養が存在する。それ故この階層はまた,公正と知性とに関して国家の基柱をなす」1 と官僚制を評価した。「統治権 君主の裁可と裁可の実行や適用,一般にすでに裁可されたこと,すなわち現行の法律,制1 ヘーゲル『法の哲学』(1821年)高峯一愚訳 論創社 1983年5 月 250 頁