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38 高知論叢 第98号一義的な対応関係にたつ。剰余価値がなりたてば,その背後に,かならず母胎である価値の存在が確認される。 ここで,一歩ふみこんでいえば,独立生産者からは付加価値だけがうまれ,労働力が商....

38 高知論叢 第98号一義的な対応関係にたつ。剰余価値がなりたてば,その背後に,かならず母胎である価値の存在が確認される。 ここで,一歩ふみこんでいえば,独立生産者からは付加価値だけがうまれ,労働力が商品形態をとってはじめて剰余価値が創造されるということは,剰余価値が生産条件の排他的所有を究極の根拠にして成立することをいみする。つまり,独立生産者のばあい,付加価値をうみだす1労働日は,労働者を生産条件の所有者として再生産する必要労働だけからなりたつ事実をふまえれば,賃労働者のばあい,労働者からの生産条件の分離を原因として,一方で,その必要労働が労働力の再生産にようする消費財の価値部分に圧縮され,他方で,労働日が必要労働をこえて延長される正反対の方向性をもつ二面的な運動の作用によって,剰余価値がうまれることになる。賃労働者だけが剰余価値をうみだすという命題は,剰余価値が対立的な生産関係の特別な産物であるゆえんを内包している。価値による剰余価値の創造という因果は,その果実が生産関係に固有な所産であるという要素と不可分の関係にたつことを銘記すべきである。 剰余価値をうむ主体が価値であるとすれば,剰余価値発生のしくみは,生産要素である生産手段や労働力が商品として売買される単純流通と,生産要素という存在形態をとった価値によって剰余価値が創造される生産過程との立体的な統一においてなりたつことになる。『資本論』が,剰余価値生産をもって,商品を価値の基本形態とする単純流通のうえに展開したのは,剰余価値の母胎が価値であることによる3)。商品を基本的な要素とする価値をまえもってとかなければ,それを母胎とした剰余価値はうまれない。剰余価値生産とは,まさに価値そのものの自己増殖である。 剰余価値の母胎が価値だという主体と客体の関係は,資本主義とそれ以前の奴隷制や封建制の生産形態での剰余労働がもつ性格の相違をてらしだす。奴隷制や封建制では,剰余労働は,労働者自身が生産条件の一部をなすため4),人身的な支配従属関係にもとづいてうまれる。それにたいして,資本主義では,労働者が生産条件にぞくさないため,価値が,労働力を交換によって手にいれる媒介をへてはじめて,労働を取得することができる。したがって,剰余労働は,前者では,人身的な支配従属関係に直接依存する。ところが,後者では,