098号

098号 page 42/120

電子ブックを開く

このページは 098号 の電子ブックに掲載されている42ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
40 高知論叢 第98号働の取得とは,すくない労働によるよりおおくの労働の領有が商品交換を基礎にして成立する関係をいみする。資本の取得する剰余労働がもつ人身的な関係によらない独自な性格は,剰余労働が前提す....

40 高知論叢 第98号働の取得とは,すくない労働によるよりおおくの労働の領有が商品交換を基礎にして成立する関係をいみする。資本の取得する剰余労働がもつ人身的な関係によらない独自な性格は,剰余労働が前提する商品交換の存在によって担保される。だから,「剰余価値形成すなわち等価物なしでの他人労働の取得」(MEGA, Ⅱ/3・6, S. 2218)というとおり,資本による等価なしでの剰余労働の取得には,他人労働の無償での入手という奴隷制や封建制との同一性と,直接身分関係によってではなく商品交換を媒介にしたその独自性との二つの契機が統一されている。労働者は,奴隷や農奴でなくなってはじめて,労働力を自由に処分可能になった。剰余労働がなりたつのは形式的には自由な労働という前提上である点に,資本主義的搾取の特殊性がある。「他人の労働ではあるが形式的には自由な労働の搾取にもとづく資本主義的私有」(Kapital, Ⅰ, S. 790)。したがって,剰余価値の生産とは,等価交換にもとづく不等な労働量のとりかえに帰着する。2 「搾取の数学的証明」の骨子 ところで,世上,「マルクスの基本定理」の証明と称して,搾取率が正であるかぎり利潤率もまた正になるという因果関係をしめし「搾取の数学的証明」ととなえる議論がある。これによれば,「搾取の数学的証明」は,等価交換を前提しないで搾取の存在が証明でき,等価交換の想定にたいする批判をかわすことができると自賛される。「搾取の数学的証明」は,つぎのように展開される1)。 p1・p2をもっておのおの生産財・消費財1単位あたりの市場価格,a1・a2をもって生産財・消費財1単位の生産に必要な生産財の使用価値量,l1・l2をもって生産財・消費財1単位の生産に必要な生きた労働量,wを貨幣賃金率(1時間あたりの貨幣賃金)とすれば,生産財と消費財とが1種類ずつ生産される二大部門からなる社会全体において,利潤が両部門で存在する事態は,p1>a1p1+l1w (1)p2>a2p2+l2w (2)とあらわされ,貨幣賃金率wを実質賃金率R(1時間あたりの貨幣賃金で購入できる消費財分量)とすれば,w=Rp2 (3)となる。利潤が社会的に存在するには,(1)・(2)・(3)が p1> 0 ,p2> 0,w> 0