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42 高知論叢 第98号張はなりたたない。 以上が,搾取率が正であるかぎりで利潤率も正になるという「マルクスの基本定理」の証明である。1) くわしくは,置塩信雄・鶴田満彦・米田康彦『経済学』大月書店,1988年....

42 高知論叢 第98号張はなりたたない。 以上が,搾取率が正であるかぎりで利潤率も正になるという「マルクスの基本定理」の証明である。1) くわしくは,置塩信雄・鶴田満彦・米田康彦『経済学』大月書店,1988年,209 -11ペ―ジ 参照。3 剰余条件と価値の自己増殖 それでは,等価交換を想定しない「搾取の数学的証明」は,剰余価値論の普遍的な証明方法たりうるのだろうか。おもうに,「搾取の数学的証明」の欠陥は,価値が剰余価値をうみだす因果をといたマルクスの解決のポイントを看過する点にある。「搾取の数学的証明」では,価値によって剰余価値がうみだされる特有な因果を内蔵する生産関係がみおとされる。 まず,形式上の手続きの面からいえば,生産係数(a[商品1単位の生産に必要な生産財の使用価値量]とl[商品1単位の生産に必要な生きた労働量])で表現される二部門構成の不等式は,蓄積財源の生産をふくむ独立生産者の商品交換にもなりたつ。独立生産者の生産物は,資本主義的になぞらえていえば,三つの構成要素からなりたつからである(Kapital, Ⅱ, S. 330 f.)。二部門構成の不等式が独立生産者間の貨幣関係にもなりたつとすれば,剰余条件にしめされる利潤の発生根拠は,蓄積財源がうまれる商品生産の基礎上ではどこでも同等に妥当することになる。利潤の発生根拠とされる剰余条件とは,独立生産者による商品生産にもあてはまる超歴史的な蓄積財源の生産にすぎない。1-Rt2>0という剰余条件は,1時間の生きた労働-1時間あたりに取得する労働分量>0 にひとしく,両者の差額分は,蓄積財源の生産にようする労働をあらわすためである。しかし,蓄積財源に支出される労働は,イコール剰余労働ではなく,独立生産者のばあいのように,必要労働という規定をうけとることもある。ようするに,最初に設定される二部門構成の不等式が独立生産者による商品生産にもあてはまるとすれば,1-Rt2>0 という剰余条件は,資本主義に限定されない蓄積財源の生産を表現するにすぎないことになる。小商品生産にも通用す