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価値による剰余価値の創造43る二部門構成の不等式からみちびきだされる剰余条件は,資本主義に特有な剰余価値の秘密を特定しない。 しかし,一歩ふみこんでいえば,「搾取の数学的証明」のより本質的な問題点は,資....

価値による剰余価値の創造43る二部門構成の不等式からみちびきだされる剰余条件は,資本主義に特有な剰余価値の秘密を特定しない。 しかし,一歩ふみこんでいえば,「搾取の数学的証明」のより本質的な問題点は,資本から剰余価値がうまれるという観点のうすさの不可避的な帰結として,労働支出に価値を前貸ししない独立生産者の生産活動に,剰余価値をみいだす主張とリンクしている点にある。換言すれば「搾取の数学的証明」にあっては,価値による剰余価値の創造という因果を閑却して,蓄積財源をうむ労働を剰余労働とみなすため,価値の投下なしに独立生産者に剰余価値の生成をみる考えが直線的にうまれるのである。すなわち,一般に,ある特定の労働生産性の基礎上で,労働力は,1日に享受する消費財だけではなく,それ以上の蓄積財源をつくりだす。そこで,賃労働者に妥当する必要労働の観念を機械的にあてはめる結果,独立生産者が必要労働をこえて支出する剰余労働は,生産物の商品への転化にともなって,剰余価値に還元されるとみなされる。1-Rt2>0 という剰余条件は,1労働日をTであらわせば,T-TRt2>0 と表現され,それは,1労働日-必要労働 >0 と翻訳され,剰余労働の生成とおなじになるからである。賃労働者が剰余労働をうみだすことから水平思考して,独立生産者は剰余価値を形成すると考えれば,剰余価値は,労働支出のための価値の前貸しなしに一方的になりたつことになる。だから,蓄積財源をつくる労働を超歴史的に剰余労働とみなし,それが市場で剰余価値に還元されると無条件に考えれば,価値の前貸しなしに剰余価値の形成をみる発想が自動的に成立する。蓄積財源をうみだす労働は,それ自体としては,どんな特定の生産形態にもかかわりのない労働過程にぞくするカテゴリーにすぎない。それは,基本的に,具体的有用労働の次元にぞくする労働生産性の増進によって規定されるからである。したがって,「搾取の数学的証明」の究極的な基礎には,労働者による生産条件の所有関係ぬきに,蓄積財源に支出された労働を剰余労働とみなす観念がある。 貨殖の秘密の焦点は,資本との対応関係において,その特有な自己増殖分として,剰余価値の生成をとくことにある。なぜなら,剰余価値は,あくまでも資本という独自な主体によってうまれる被造物だからである。資本の先行的な