098号

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44 高知論叢 第98号存在なしに,その独特な果実としての剰余価値の形成はなく,両者は,論理的な先後関係にたつ。ところが,「搾取の数学的証明」にあっては,じつは,1-Rt2>0 という剰余条件をなりたたせる....

44 高知論叢 第98号存在なしに,その独特な果実としての剰余価値の形成はなく,両者は,論理的な先後関係にたつ。ところが,「搾取の数学的証明」にあっては,じつは,1-Rt2>0 という剰余条件をなりたたせる資本という主体が存在しない。剰余価値は,資本という特殊歴史的な主体のうみだす産物だという要石が固定しておれば,あらかじめ商品価値をとかねば論じえないという1本のすじみちが理解されえたと推論される。資本による剰余価値の創造という因果が閑却されたため,独立生産者のばあいにもあてはまる剰余条件が,商品価値ぬきにあたかも貨殖の必要十分条件であるかのようなよそおいのもとに登場したにすぎない。等価交換を前提しない1-Rt2>0 という剰余条件が剰余価値の秘密だという主張は,その果実が資本の特有な生産物としてうまれる因果の見落としにゆらいする必然的な帰結である。資本によって剰余価値がうまれる関係が没却されれば,蓄積財源の生産がストレートに剰余労働とむすびつけられ,剰余価値に還元される論法がうまれることは必定である。価値が主体となって剰余価値をうみだす関連が不明確であれば,賃労働者の剰余労働がそれ以前の奴隷や農奴に比してもつ差別性つまり商品交換にもとづく強制労働である特殊性がかきけされる羽目になる。価値にもとづいて剰余労働をといてのみ,賃労働によって支出される剰余労働のもつ差別性が規定され,もって賃労働たるゆえんがなりたつ。 ちなみに,「搾取の数学的証明」では,1時間あたりの労働にたいする支払いはあっても,労働力商品は登場しない。労働力の売買が明示的に規定されなければ,それに投下された価値の自己増殖つまり剰余価値創造をみちびくことはできない。労働力商品の解消は,価値による剰余価値の創造という資本概念からの逸脱の集約的なあらわれである。労働力商品の販売によって,剰余価値が究極的には生産条件の排他的所有に規定されている社会的な性格が指摘できる。生産条件の排他的所有は, 労働力をふくむ商品の全面的な価値関係の造出によって,価値による剰余価値の創造をもたらす。生産条件と労働者との分離=労働力の商品化は,資本を形成することによって剰余価値をもたらすから,剰余価値をとくさいの隅の首石である。ようするに,剰余価値の創造は,一義的に,生産条件の排他的所有が規定する労働力商品の販売にゆらいする。「搾取