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価値による剰余価値の創造45の数学的証明」では,労働力商品による剰余価値創造という特有な因果がとかれていない事実に極力注目してよい。労働力商品が規定されなければ,労働力がその購買によって資本にぞくするた....

価値による剰余価値の創造45の数学的証明」では,労働力商品による剰余価値創造という特有な因果がとかれていない事実に極力注目してよい。労働力商品が規定されなければ,労働力がその購買によって資本にぞくするため,必要労働をこえる剰余労働を強制される特有な社会関係が説明されない。「搾取の数学的証明」において,剰余価値をとくさいの価値の非前提と労働力商品の不在とは,ペアである。商品価値を前提しないため,労働力商品は登場できない一方,労働力商品を登場させるためには,商品価値の規定が必要になるから,両者は,根本的にはおなじ一つの事柄に帰着する。労働力商品を基礎にしない「搾取の数学的証明」をみとめれば,マルクスによる剰余価値の秘密の解決はご破算になる1)。 貨殖の秘密解決における等価交換の前提は,剰余価値の母胎が価値にある事実に対応する。価値が剰余価値をうみだすため,その発生メカニズムは,商品価値を前提してとかれる。「搾取の数学的証明」で等価交換を前提しない想定は,価値どおりの価格の拒否ではなく,価値そのものを前提しないことをいみする2)。等価交換の非前提とは,それに名をかりて,価値による剰余価値の創造という資本概念を否定することである。等価交換の想定は,価値による自己増殖の説明を内包し,そのぎゃくは,価値を基礎においた剰余価値発生の説明の否定になる。「搾取の数学的証明」での等価交換の排除は,その本質において,価値による剰余価値創造の閑却に帰着する。価値を基礎にすえない搾取の説明が正当であれば,単純流通からはじまる『資本論』は,賽さいの河かわら原の石づみになる3)。両者は,まるで水と油のように反発しあう関係にたつ。剰余価値の秘密をもって,剰余労働をうみだす労働力の超歴史的な属性にみとめれば「搾取の数学的証明」がなりたち,ぎゃくに,労働力の商品化にもとめれば,価値を基礎においた『資本論』特有な説明が成立する。 以上,本節で,「搾取の数学的証明」には,価値が剰余価値をうみだす特有な因果をとく『資本論』の剰余価値論の精髄がドロップしている深刻な事態を指摘した4)。「搾取の数学的証明」にあっては,まずもって『資本論』では剰余価値が価値の自己増殖分としてとかれている事実の確認が必要である。1) 「搾取の数学的証明」が労働力商品にふれないのは,その説明の本質的な性格にかかわっている。労働力商品が登場すれば,その価値が問題になる結果,前貸しさ