098号

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48 高知論叢 第98号くる労働と剰余労働との混同をといてはじめて成立する。それと同様,「搾取の数学的証明」は,剰余価値を資本の内在的な産物としてではなく,それとは別個にみちびく従来説と呼応する親密な関係....

48 高知論叢 第98号くる労働と剰余労働との混同をといてはじめて成立する。それと同様,「搾取の数学的証明」は,剰余価値を資本の内在的な産物としてではなく,それとは別個にみちびく従来説と呼応する親密な関係にある。労働生産物の商品への転化に対応して,蓄積財源をつくる剰余労働が剰余価値に還元されるとみなせば,剰余労働は,そのまま商品生産に対応して剰余価値に転化するから,『資本論』がとくように,剰余価値が資本の特有な所産としてなりたつ必要性は,みじんも存在しないことになる。したがって,「搾取の数学的証明」では,もともと『資本論』の剰余価値論とは相いれない土台から出発しているため,価値によって剰余価値の創造をとく『資本論』とは正反対の方法が提起される。「搾取の数学的証明」が一見『資本論』と抵触しないかにうつる外観をもつ剰余条件1-Rt2>0 には,蓄積財源の生産と剰余労働との混同がある。資本主義を「交換価値に基礎をおく生産」(MEGA, Ⅱ/2, S. 50)ととらえる『資本論』の観点は,価値から剰余価値をひきだす一本の直線のような因果関係に具体化される。重農主義は,価値概念をとびこえて剰余価値を論じ,建物の礎石をすえるまえに住居の階層をつくった1)。それになぞらえていえば,「搾取の数学的証明」には,資本という主体を跳躍して,剰余労働という客体をみちびきだす点で,重農学派のような飛躍がある。1) 「科学は,他の建築師と違って,ただ空中楼閣を描くばかりでなく,建物の礎石を据えるまえに,住居となるひとつひとつの階層をきずくのである。」(マルクス『経済学批判』国民文庫,杉本俊朗訳,43[原]ページ)