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71 論 説国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理1飯  國  芳  明  1. はじめに わが国で初めて導入された直接支払制度は,中山間地域等直接支払制度である。2000年度に導入されたこの制度に....

71 論 説国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理1飯  國  芳  明  1. はじめに わが国で初めて導入された直接支払制度は,中山間地域等直接支払制度である。2000年度に導入されたこの制度に引き続き,2007年度には麦大豆(等)直接支払制度2,及び,「環境にやさしい営農活動への支援」3(以下,農地水環境支払制度とする)が導入された。これによって,直接支払の世界標準ともいえる条件不利地型,所得補填型,環境保全助成型の3 つのタイプの支払が整備されたことになる。また,民主党政権の下では直接支払制度をさらに拡充させ,2010年度には新たな直接支払だけでも5,000億円以上の規模の支払が計画されている。日本の農政は着実に直接支払の比率を高めつつある。 直接支払制度の拡充は,農政の転換を意味する。すなわち,価格支持から直接支払への転換である。従来の農政では価格支持政策に軸足を置き,関税や輸入数量制限といった国境措置や国内市場への介入による価格支持によって国内農業を保護してきた。しかし,今後は,これに代わって,政府から農業経営者への直接的な所得移転である直接支払が主たる政策手段となる。 高知論叢(社会科学)第98号 2010年7 月1 本稿は2010年3 月28日(日)に京都大学で開催された日本農業経済学会第20回大会のミニシンポジウム「直接支払をいかに設計すべきか?-国民合意の視点から-」の座長解題を加筆修正したものである。2 水田畑作経営所得安定対策における制度。3 農地水環境保全向上対策における「環境にやさしい営農活動への支援」を指す。同制度にある「農地・水・農村環境を守り育む共同活動への支援」は,対象が非農家を含むこと,及び,地域における裁量権が大きいことから,直接支払というよりは地域政策に分類するのが適当と考えられる。