098号

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6 高知論叢 第98号織を新体制において融合させるだけで事足りた。(2)統帥権と武官独裁前立憲制時代の君主制下においては,軍の統帥権が王権のもとにあり,その限りで統帥権は独立していた。実質的な統帥権は将軍....

6 高知論叢 第98号織を新体制において融合させるだけで事足りた。(2)統帥権と武官独裁前立憲制時代の君主制下においては,軍の統帥権が王権のもとにあり,その限りで統帥権は独立していた。実質的な統帥権は将軍に委任されたとしても,君主の統帥権が君主以外の家臣に掌握されていたわけではない。統帥権が君主以外に移動すれば王制の交代を意味した。君主が直接軍を指揮した場合と,幕僚将校,将軍に委任した場合があったが,世の東西を問わず後者の形態が大半であり,君主が直接軍令を発し,統帥することはなかった。むしろ君主が軍隊を直接指揮したとされた事例は,伝説上の人物に限られていた。日本では天皇の統帥権は兵馬の権と言われてきた。武家政権下でも朝廷が征夷大将軍を任命し,名目的な兵馬の権は天皇の権威の下にあった。兵馬の権を名実ともに朝廷にもどすことが維新の目標であった。明治政権は統帥権が武家から天皇に恢復されると同時に,立憲制下の近代的兵制を確立するという難題に迫られていた。兵馬の権が,統帥権へと名称を変え,憲法と君主制下の兵馬の権を融合させた結果,日本の統帥権独立組織はそれまで世界の憲政下では類例がないほど強固なものとなった。統帥権が国家元首の下に在るべき事は,立憲制か非立憲制下を問わず,また大統領制,議院内閣制,君主制,軍事独裁国家であるかを問わない。問題は立憲制度下における統帥権独立組織である。立憲制度下の統帥権独立組織の問題点は,統帥権がいずれかの特定の勢力によって独占的に掌握され,他の政治勢力,国民によって統御不能になることである。兵馬の権,帷幄上奏,統帥権干犯という日常聞き慣れない日本語がメディアを通じて国民に流れ,その異様な響きが,軍官僚が兵権を独占することに有効に機能した。他の部局,国民,政党は兵権には関与できない専門領域であった。日本の統帥権独立は武官独立と同義であり,日本の統帥権独立組織とは,平時におけるミニマムは陸軍参謀本部と海軍軍令部を指し,戦時には陸海軍全体に及んだ。しかも統帥権独立組織の人事,予算,軍政に対しては,戦時はいうに及ばず平時においても文官は一切関与が出来なかった。また,総帥権独立組織のみならず陸海軍大臣の人事は