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国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理793. 日本における国民合意の基本課題 直接支払制度の後発国である日本においてもこうした合意形成が果たして可能であるかどうかは,大きな問題である。少なくと....

国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理793. 日本における国民合意の基本課題 直接支払制度の後発国である日本においてもこうした合意形成が果たして可能であるかどうかは,大きな問題である。少なくとも,これまでの日本における直接支払制度の導入をみるかぎり,欧州の経験をそのまま適用するのは容易ではないようにみえる。日本固有の社会や環境への認識,さらには,財政状況などが欧州とは著しく異なるからである。そこで,以下では,こうした日本固有の特質を負担,支払の両面に分けて整理し,日本における合意形成の方途を探る議論の出発点としたい。(1) 負担をめぐる合意形成の日本的特質 直接支払は,すでに述べたように政府から農家への直接的な所得移転である。その意味で欧州の支払も日本のそれも直接支払であることには違いはない。しかし,負担のあり方からみるとき,両者には少なからぬ差異がある。すでにみたように,欧州の直接支払制度では,価格支持の削減と直接支払の増額が一対として実施されてきた。これに対し,日本の現行制度ではこの対応関係はみられない。むしろ,従来の価格支持制度をWTO の国際規律に準じて組み替えたという性格が強く,所得補償型の麦大豆(等)直接支払において国境措置や価格支持の削減は明示されていない。また,麦大豆(等)直接支払の大半は補助金を組み替えて導入された制度であり,負担者の転換ではなく,補助金の使途の転換といった方が適切である9。欧日の間のこうした相違にもかかわらず,いずれも直接支払と呼ばれているため,直接支払の議論はしばしば混乱してきた。この種の混乱を避けるには,直接支払を国際規律10に適合したものとその負担の9 麦大豆(等)直接支払を含む水田畑作経営所得安定対策は,来るべきWTO の決着に際してコメを直接支払の対象に含め,関税引き下げの対応策とする準備があったとも推察できるものの,こうした情報は少なくとも納税者には明示的に流されてはいない。また,大豆については一般財政から支出されていることをもって財政負担型の制度になっているとする意見もある。しかし,ここでは価格支持水準の削減を伴うかどうかが問題であり,上記のような負担の転換はなされなかったとするべきであろう。10 ここでいう国際規律とはWTO ルールの上でいう緑の政策の要件をさす。