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国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理87日本では戦後の高度成長期以降がこの時期にあたり,農業調整問題を解決するために農業基本法(1966)が制定された経緯もある。農業調整問題の中心は,農村に滞留....

国民合意に基づく直接支払制度設計のための論点整理87日本では戦後の高度成長期以降がこの時期にあたり,農業調整問題を解決するために農業基本法(1966)が制定された経緯もある。農業調整問題の中心は,農村に滞留した労働力の存在であったが,21世紀に入ると,問題そのものが縮小する。日本農業を支えてきた昭和ヒトケタ生まれの農業従事者が大量に農業からリタイアして,滞留する人口が減少するためである。 日本で直接支払制度の導入が始まったのは,まさにこの時期であり,旧来の農業調整問題が解消しつつある段階である。したがって,新しい農業政策は農業調整問題段階とは異なった政策の根拠と理念が求められる。しかし,人口は減少しても旧来の政治構造や政治力はそのまま残存しやすく,従来どおりの農業保護は名前だけを変えた政策として出現しかねない。P. リーダー氏はこれを「環境のマントを羽織った農業保護」19と命名した。食料・農業・農村基本法は,多面的機能の発揮には旧来の農業の変革を要しないとする点で,こうした性格を色濃くもっている。 新たな農業政策では従来の政策との差異が明確に分かることが重要であり,旧来どおりの保護政策とは何が違うかのを国民や納税者が理解できるための努力が要請される。これは介護保険制度などの新しい制度との大きな相違点であり,新しい農業政策にはその存在根拠も含めた国民的理解が求められる根拠でもある。19 Peter Rieder(1998), Berglandwirtschaft im Spannungsfeld von Markt, Politik undGesellschaft.