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漁業権による沿岸海域の管理可能性911 沿岸海域利用の競合関係 ハーディンの指摘した「コモンズの悲劇」の対象は共有地であったが4,海洋もまた,競合性と非排他性があり,コモンズ論の有力な検討対象と考えられ....

漁業権による沿岸海域の管理可能性911 沿岸海域利用の競合関係 ハーディンの指摘した「コモンズの悲劇」の対象は共有地であったが4,海洋もまた,競合性と非排他性があり,コモンズ論の有力な検討対象と考えられる。婁小波氏は,そのような海洋のうち,日本の沿岸地域にはコモンズとしての海を適正に管理する制度があると指摘する5。遠洋漁業や沖合漁業に比べ,沿岸漁業が安定的な漁獲をあげ続け,持続可能性の高い漁業であることを指摘し,その要因として,漁業法および水産業協同組合法によって制度づけられている漁業権制度を挙げる。そして,漁業権に基づく漁業協同組合等の漁業集団による資源管理について,成功事例とそうでない事例があることを指摘し,タイトなローカルコモンズとして沿岸漁業の資源管理を捉え,管理組織として優れているものの条件について検討している。 従来からある漁業権制度を背景とした漁業協同組合等による沿岸海域の利用と管理は,しかしながら他の第1次産業と同じく,こうした産業を取り巻く厳しい環境の影響もあって,就業構造が硬直化し,漁業従事者の大幅な減少と高齢化が進むなどして,全体として衰退傾向にある。一方,従来の伝統的な漁業的利用の隙間をうめるようにして,あるいは押しのけるようにして,一部地域でマリンレジャーが近年盛んに行われるようになってきている。マリンレジャーには,海水浴やサーフィンといった,漁業の操業区域とはあまり重ならない海域で行われるものもあれば,海釣りのように漁業と直接重なりあう海域で行われるものもある。酸素ボンベを使って海中に潜り,サンゴ,海草,魚等の海洋性生物を観察したりして楽しむスキューバダイビングも,そうした人気のあるマリンレジャーのひとつである。ダイビング人口は推計で50万人とも100万人以上とも言われ6,国内ではサンゴ礁等の美しい景観を楽しむことのできる南西4 Hardin, G.,“The Tragedy of the Commons,”Science, 162, 1243-1248, 1968.5 婁小波「漁業コモンズの機能と管理組織の役割」浅野耕太編著『自然資本の保全と評価』(2009年 ミネルヴァ書房 151-173頁)。6 須賀潮美『ダイビングの世界』(1999年 岩波新書)3 頁。このほか,海上保安庁救難課監修『レジャースキューバダイビング』(2004年五訂版 西山堂)4 頁では100万人と