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92 高知論叢 第98号諸島等が人気となっており,こうした地域では観光資源として地元経済に貢献しているところも多い。しかし,特に人気のあるダイビングスポットを抱える地域では,年間数万人がダイバーとして訪れ....

92 高知論叢 第98号諸島等が人気となっており,こうした地域では観光資源として地元経済に貢献しているところも多い。しかし,特に人気のあるダイビングスポットを抱える地域では,年間数万人がダイバーとして訪れ,漁業の操業区域内でダイビングを行うなどの行為によって地元漁業者とトラブルになっている地域も見受けられる。こうした地域の中には,顧客にダイビングを楽しませる業者が同業者団体を作って,あるいは漁業協同組合や地元漁業者で組織する地縁団体等が直接指導,監督する形をとって,ダイビングスポットを管理し漁業者との衝突を回避する,あるいはダイビングスポットへ向かう際に漁船を利用するなど,共存共栄を図っていこうとしている地域も多いが,軋轢が深刻化し,漁業者や漁協の意向等を反映してダイビングスポットが閉鎖されたり,両者の対立が深刻化して訴訟にまで至っているケースも見られる。 そうした状況にある地域として,高知県内では幡多郡大月町柏島が挙げられる7。柏島は,ハマチやマグロの養殖,イサキ等の一本釣漁など漁業が盛んな地区であるが,同時に近年のマリンスポーツ,マリンレジャーブームの流れに乗ってスキューバダイビングが盛んになり,西日本有数のダイビングスポットとして,関係者の間では有名な存在となっている。柏島周辺には,ダイビングのガイド,ダイビング用器材のレンタル,ダイビングポイントまでの船での案内などを業とするダイビングサービス業者が数多く存在している。このような状況の下,ダイビングスポットを巡るダイビング業者内部の対立が顕在化し,また,ダイビング業者が更なるスポットの開放を求めていることから,漁業権を有する漁協および漁業者との軋轢がおきているほか,ダイビング客の増加がダイビングスポット周辺の環境破壊をも招いている。推計されている。7 詳細については,緒方賢一「柏島における海の地域共通資源の管理について」(『コモンズにおける資源管理ルールの再構築』(平成15~平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究 研究代表・吉岡祥充 2006年 146-167頁)参照。なお,新保輝幸・諸岡慶昇・飯國芳明「森のコモンズ・海のコモンズ(2)」(『海洋と生物』27(6)2005年579-587頁)に科研費研究の成果の一部, 柏島の漁業とダイビング事業をめぐる問題状況の詳細が公開されている。このほか,新保輝幸「海のコモンズの現代的可能性」(『高知論叢』97 2010年 35-62頁)には柏島周辺漁業権およびダイビングスポットを示した図も含めた紹介がある。