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漁業権による沿岸海域の管理可能性95漁協の指導が十分に行き渡らないこと等が要因となって,海の利用秩序が形成されているとは言い難い状況にある。大瀬崎のような,漁業権ないし地先権にもとづく秩序形成が必ずうま....

漁業権による沿岸海域の管理可能性95漁協の指導が十分に行き渡らないこと等が要因となって,海の利用秩序が形成されているとは言い難い状況にある。大瀬崎のような,漁業権ないし地先権にもとづく秩序形成が必ずうまくゆくものではないことを,残念ながら示す結果となっている。しかし,柏島では,地元住民等の業種を超えた有志が集まり「島おこしの会」をつくって,島の様々な問題について話し合い,問題解決に向け努力していた11。また,「島おこしの会」とNPO 法人黒潮実感センターが中心となって,強制力を伴うものではないが,漁業者も島の住民もダイビング関係者も,島に関わるすべての人々が守るべきルールとして,「里海憲章」をつくろうという動きも見られた12。何らかのルールを,漁業者もダイビング業者も含めた形で地元の総意で示すことができれば,海の利用と管理に関する利用秩序の形成の起点となるのではないだろうか。2 高知県の漁業の状況2-1. 高知県漁業の概況 前節では,海のコモンズ利用に競合がある場合について検討したが,海の利用については競合ばかりが問題ではない。以下では,高知県を事例として,海の利用,特に漁業的な利用がどのようになされているか,現状をみるとともに,県の漁業政策とそれに沿った形でなされた漁業協同組合の合併について若干の紹介を行い,さらに漁業権の実状をみて,高知県においては利用の過剰ばかりでなく過少も問題とされるべきということを指摘する。 高知県は北を四国山地,南を太平洋に囲まれた山と海の県である。土佐湾の沖を黒潮が流れるため好漁場が多く,古くから漁業が盛んに行われてきた。全11 緒方前掲注7,166頁参照。12 黒潮実感センターの取り組みについては,神田優「持続可能な里海づくりに向けた黒潮実感センターの取り組み」(前掲注7『コモンズにおける資源管理ルールの再構築』90頁-109頁)参照。また,特定非営利活動法人黒潮実感センターウェブサイト(http://online.divers.ne.jp/kashiwajima/title.html)も参照(2010年6 月現在)。「里海」は里山に対応する,人とのつながりの中で持続的に利用されてきた身近な海―沿岸海域のことを指す。