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106 高知論叢 第99号である。その他の自転車の生産は製造業者が不明とされているものを除いて,納品業者と製造業者が一致しないということであり,つまり,日本自転車産業では広範な形での外部組織の活用が行われて....

106 高知論叢 第99号である。その他の自転車の生産は製造業者が不明とされているものを除いて,納品業者と製造業者が一致しないということであり,つまり,日本自転車産業では広範な形での外部組織の活用が行われていることを示している。それでは,以下では,日本のナショナルブランドメーカー(NB メーカー),あさひ,ジャイアントの順にそれぞれ諸機能間の能力ギャップが如何なる状況にあり,その結果,どのような行動を採っているかをみよう。日本の主なNB メーカーには,ブリジストンサイクル,パナソニックサイクルテック,丸石サイクル,宮田工業(現ミヤタサイクル,以下ミヤタサイクルとする)などである。これらのNB メーカーは毎年のモデルチェンジを行うという点では自社に開発力を有しており,販売台数のほとんどが自社ブランドである点から,販売力?開発力という状態であることが総じていえるであろう。また,外部企業から完成車をOEM 発注によって調達している事実から,生産力は販売力に対して不足しているという状態であり,類型Ⅱに分類できる。個別企業に目を移せば,表5でも確認できる通り,パナソニックサイクルテック,丸石サイクルが外部組織から完成車を調達している。パナソニックサイクルテックはGIANT PHENIX13から,丸石サイクルは天津富士達集団有限公司から完成車のOEM 調達を行っている。日本最大のNB 完成車メーカーであるブリヂストンサイクルは,最近まで一部のマウンテンバイクを台湾の美利達からOEM 調達していたが,2010年に入って両者の提携関係は解消され,美利達は新たにミヤタサイクルと提携関係を結んでいる。次に,PB メーカーの動向をみよう。完成車を外部組織から調達するのはメーカー間だけではなく,小売企業がメーカーからPB 商品として完成車を調達するパターンがある。この場合,小売企業は販売力を持つのみで,開発力や生産力は生産力に対して不足しているため,類型Ⅰにプロットされる14。ただし,発注の際,基本的な製品企画を行うことは可能であり,メーカーにその製品企13 台湾の完成車メーカーのジャイアント社と中国の完成車メーカー鳳凰との合弁企業である。14 なお,渡辺他[2009]では,小売業が製造業化しつつある事例が指摘されており,より詳細な調査によって,小売業の生産・開発への関与の度合いを示す必要がある。