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110 高知論叢 第99号発力を補っている18。さて,富士フイルムをみよう。富士フイルムは一時期を除き,OEM/ODM調達せずに,国内生産拠点や中国生産拠点の生産力を増強してきた。しかしながら,2008年に国内生産拠点....

110 高知論叢 第99号発力を補っている18。さて,富士フイルムをみよう。富士フイルムは一時期を除き,OEM/ODM調達せずに,国内生産拠点や中国生産拠点の生産力を増強してきた。しかしながら,2008年に国内生産拠点を閉鎖するとともに,中国拠点もこれ以上の増強を行わない方針が出されると,販売力に対して生産力が不足する状況になった。また,デジタルスチルカメラ時代をいち早く予見してきた富士フイルムは競合他社に比べて強力な研究開発部門を維持し続けてきた結果,販売力を上回る開発力を持ち続ける状況になっている。現在の富士フイルムは,類型Ⅱに分類できる。では,富士フイルムは一体どのような行動を採っているのだろうか。ひとつはODM 企業への思い切った発注であった。富士フイルムは実売価格89ドルを切る「A170」という機種を2009年7 月に投入する19。自社開発・自社生産から自社ではほとんど何も手掛けないODM 発注へと舵を切ったのである。もし,本当にそうならば,過剰な開発力はより一層の余剰が生まれ,能力ギャップは深刻になるように思える。しかしながら,余剰の開発力を次世代の機能開発に振り向けることによって近い未来の競争力の源泉にしようとする取り組みも散見できる。このことは短期的には機能間能力ギャップを解消できないが,もう少し長いサイクルで考えれば能力ギャップを解消していることになるかもしれないのである。4 小  括以上のような個別事例をまとめると,図3 のようになる。時には諸機能間の能力ギャップを解消することなく看過していることもあるだろうが,各社の特徴的行動においては,いずれの事例でも売力視点が想定する外部組織の活用形態になった。ただし,いくつかの発見事項もあった。例えば,トヨタ自動車や富士フイルムの事例で見たように,長期的な視点に立って不足する能力を次世代の製品分野に投入する選択や,過剰な能力を即時的にOEM / ODM や開発18 なお,2008年時点ブランドメーカー別世界シェアで第5 位の8.7%を獲得している。19 台湾企業Altek への発注であると報じられている(『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号)。