099号

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26 高知論叢 第99号を評価して,アメリカのオストローム(Elinor Ostrom)氏にノーベル経済学賞が授与された。公共性研究は,2000年代に「公共性ルネッサンス」ともいえる時代を迎えたと評価する研究者もいれば,「....

26 高知論叢 第99号を評価して,アメリカのオストローム(Elinor Ostrom)氏にノーベル経済学賞が授与された。公共性研究は,2000年代に「公共性ルネッサンス」ともいえる時代を迎えたと評価する研究者もいれば,「公共性の知的バブル」と皮肉る研究者もいる。公共性とはどういうことなのかについて,ますます百ひゃ花っか繚りょう乱らんという状況を呈している。公共性とは重要な概念であるので,この傾向は望ましいものである。 わたしもそれ以降,「金融の公共性」という視点から公共性と公共性研究の方法について何度も検討と思考を重ねてきて,ようやく自分なりに納得のいくところに到達した。公共性研究の方法と公共性三元論についてよりわかりやすく展開できるだけの蓄積も得られた。これらを基にして,本稿において,金融もふくめて公共性という概念について独自の視点から再構成してみたい。 以下,第1章で,わたしの公共性研究の方法を簡単に述べ,第2章で,まずは私的利用様式について説明し,第3章ではそれを受けて共同利用様式について検討し,第4章では国際共同利用様式について展開してみる。第1章 公共性研究の方法 「公共性(publicness)」とはなにか,「公共財(public goods or common goods)」とはなにか,この問いに対しては,訳が分からない,多義的である,あいまいである,などの疑問や批判が寄せられることは多い。 それもそのはずでそのような固定した,確定した財・サービスや,そういう性質を生まれながらに持っている財・サービスなどは無いからである。しかし,そのように表現される,あるいは形容されてきた物や事柄は多い。なぜなら,知的集団としての人間の多種多様で多面的な集合的行為(collective action)が,そのような概念や考えを生み出さざるを得なかったからであり,人間社会の発展に欠かせなかった集合的行為が,いろいろな歴史的な局面や歴史的な経験を経て,そのような概念や考え方を必要としたからである。公共性研究にあたっては,まずはこのような現実を踏まえるべきであるというのが,わたしの基本的立脚点である。